商品レポート

SONY ハイレゾワイヤレス製品 体験レポート

イントロ

オーディオ系のニュースサイトを見ていたら、ハイレゾワイヤレスなるものが規定されたことを知った。こういう話に明るいオーディオ仲間な先輩に教えてもらったところ、ワイヤレスヘッドホンで音楽を聴くスタイルが若者を中心に流行っているが、そのスタイルを構成する機器の中でもハイレゾらしい音質が認められる商品にはハイレゾワイヤレスロゴなるものが与えられるのだとか。

ワイヤレス方式で最も一般的なBluetoothという通信手段は帯域が狭いので、ハイレゾをデータのロスなく伝送することができないわけで、圧縮する手段、つまりコーデックを利用してスマホやミュージックプレーヤーからワイヤレスヘッドホンに音を飛ばしている。コーデックには色々な種類があるが、ハイレゾらしい音質と言えるかを日本オーディオ協会が認証し、合格したコーデックを使っている商品がハイレゾワイヤレスロゴの対象となるのだそうだ。細かく言えば、このコーデック以外は、ハイレゾ製品同等の実力を持たなければならないそうだ。

さて、その先輩から、この規定に沿った製品が 本当にハイレゾらしいものかどうか、聴いてみないか?と声を掛けられ、その結果を体験レポートにまとめるように頼まれた。ひょんな事からこのハイレゾワイヤレスを体験できるなんて、なんとうれしい機会に恵まれたことか!当然、喜んですぐに引き受けた。

体験した機器は、ワイヤレスノイズキャンセリングヘッドホン WH-1000XM3、ウォークマン NW-ZX300で、いずれもソニーの製品だが、使われているLDACというコーデックの音質優先モードが、ハイレゾワイヤレスの認証に合格したものだそうで、他のBluetoothのコーデックであるSBCやaptXなどとの音質比較をしてみようというのが、私に課せられた宿題ということになるのである。

準備

まずはヘッドホンをつけてみる。パワーオン・・・。おーー!まず、ノイズキャンセリングの静けさに驚いた。なんと、ほぼ無音になるではないか。さらに、ノイズキャンセリングボタンを長押しすると、面白いテストトーンがしばらく鳴り響き、10秒ほどで自分に合ったノイズキャンセリングの状態に最適化がされる。これにはもう一度驚かされた。この体験は皆さんにも是非味わってもらいたいと思えるほどだ。

次は、Bluetoothの接続。この説明は端折ってしまうけど、ジャックを挿すだけで音が出た従来のヘッドホンと違い、こういう設定のわずらわしさがデジタルの面倒臭いところ。特に電源を入れるたびに接続設定をしなければならないのは、なんとかならないものかな・・・

それはともかく、今回はハイレゾワイヤレスの体験だ。音質の設定を行うことにする。ウォークマンの「設定」→「オーディオ機器接続設定」→「ワイヤレス再生品質」の画面で聴きたい音質に切り替えて、Bluetoothを接続し直す。まず最初は、「LDAC音質優先」を選ぶ。これがハイレゾワイヤレスに認められた音質設定だからである。

準備の最後は、選曲だ。ウォークマンの選曲画面を開いてみると、「全曲」、「アルバム」、「アーティスト」などのさまざまなカテゴリーと並んで、「ハイレゾ」という選択肢があり、ハイレゾ曲が選びやすくできている。これは便利!

ハイレゾ曲をハイレゾワイヤレスで聴く

いよいよ再生! 最初に、Donald Fagenのアルバム「The Nightfly」より、I.G.Y. 48kHz/24bitを聴いてみる。イントロで流れるシンセサイザーとドラムのビートが印象的なこの曲がハイレゾワイヤレスを通じて、どのように耳に届くのかを試したかったからだ。
お~、いきなり最初の一音目から驚いた。イントロ部のシンセとエレクトリックピアノやベースの深みのある音まで詳細に聴き取ることができ、左右の分離感も素晴らしい。そこに追いかけるように入ってくる、きれの良いベースとドラムのリズムがビッシッとフォーカスし、抜けも良く、とても気持ちいい。これも、ハイレゾワイヤレスが持つ多くの情報量の為せる技なのか。音のディテールまでしっかりと伝わってくる。ワイヤレスでもハイレゾのおいしいところを存分に味わえることを実感。

次にオーディオ好きには定番中の定番、女性ジャズボーカル物として、Diana Krallのアルバム「When I Look In Your Eyes」からI’ve Got You Under My Skin 96kHz/24bitを聴いてみる。ボサノバのけだるい彼女の歌声、楽曲もさることながら、録音が非常に良いと評判のアルバムだ。
まず、イントロからオーケストレーション、アコースティックギター、パーカッションの音がヘッドホンで聴いているとは思えないように左右や奥行方向に広々とした空間に広がり、一気に音楽に引き込まれる。そしてボーカルが入ってくると彼女の歌声の生々しさ、色気にさらにグッと引き込まれる。やはり、女性ジャズボーカル物はこうでなくては!

次に、アコースティックジャズトリオとして、Chick Corea, Stanley Clarke & Lenny Whiteのアルバム「Forever」から一曲聴いてみる。このアルバムはUSBメモリに96kHz/24bitのflac音源を5時間以上も収録するという珍しい形態で販売されたものだ。その中でもブルーノート東京で収録されたこの「Blue Monk-Matrix」は実際に、その演奏されたライブ空間に身を置いて、感動した時の演奏なので特に思い入れがある曲だ。ジャズトリオならではのスリリングな駆け引きや、ソロ回しと言ったライブ感や空気感をどこまで感じることができるか。

聴いてみると、Thelonious MonkのカバーであるBlue Monkではスローなテンポで粘りのあるベースとのピアノ、ドラムの絡みもいいが、Chick Coreaのオリジナル曲であるMatrix になると一気にテンポが早くなり、トリオの音がスリリングに絡み合う熱い演奏になる。その中でもそれぞれの音が埋もれずに個別に聴こえてくる。アコースティックトリオの3人が、会場で生き生きと演奏しているライブ感を存分に感じとれ、ふと目を閉じると、かつて見たライブ空間が、そこに広がっていた。しばし、Bluetoothヘッドホンの音だということを忘れて聴き入ってしまった。

コーデックを切り替えて音質比較

ここでコーデックを切り替えての音質や使い勝手の部分を確認してみることにする。「LDAC音質優先」はBluetoothの帯域を目一杯使用しているようで、満員電車の通勤時に使用していると、音途切れをすることがある。しかし、「LDAC接続優先(自動)」にすればよほどの満員電車でない限り音途切れをすることが無かった。

「LDAC接続優先(自動)」は「LDAC音質優先」に比べると若干音の純度、重心の低さが劣るが、電車内で使用することを考えると十分すぎるほどに高音質だ。「LDAC接続優先(自動)」は通信環境に合わせてビットレートを可変しながら伝送してくれるとの事なので、安定接続を維持しながら最大限に高音質を維持してくれていると言えるだろう。家で聴いている分には、通信が安定しているためだろうか、「LDAC音質優先」との差が感じられなかった。

それぞれのコーデックを切り替えた時の音質比較で行くと下記の様な結果だった。あくまでも私の主観なので、ご参考までに!

「LDAC音質優先」 > 「LDAC接続優先(自動)」 > 「aptX HD」 > 「aptX」 >> 「SBC音質優先」

LDACは他のコーデックと比べて音場の広さや、静けさ、色気、ツヤ、ディテールが優れ、ベールが数枚はがれたような感じで音質的に優位だと感じる。家で音楽を聴くときは「LDAC音質優先」、通勤中は「LDAC接続優先(自動)」を選べば接続性、音質共にベストだと思う。

ハイレゾワイヤレスはすごかった。

今まで、ワイヤレスヘッドホンといえば音質に関しては不満があるけれど、ケーブルが無いという利便性のために使ってきた。しかし、このハイレゾワイヤレス製品は音質的にも満足でき、なおかつ利便性も高いという とんでもないものだった。この高音質をどこでも最大限に楽しむためのノイズキャンセリングという組み合わせがベストマッチである。通勤時間に至高の時間を楽しみたい方々にうってつけの製品だ。また、強力なノイズキャンセリング機能があるため、前よりも音量を上げなくても適切な音量になる。今まで、周囲からの雑音に音楽が負けないように、知らず知らずにヘッドホンの音量を上げがちになっていたことに、改めて気づかされた。ヘッドホンの装着感の良さもさることながら、このノイズキャンセリング機能のおかげで長時間聴いていても聴き疲れすることがなくなった気がする。毎日通勤で使ってみたが、1回満充電にすれば1週間充電しなくて済んだ。また、家では家族からうるさいと言われ、なかなかスピーカーで音楽を楽しむ時間をなかなか取れない・・・。この音質なら通勤時間だけでなく家で楽しむにも良い!これはボーナスでさっそく買うしかない!

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