商品レポート

マランツNA8005ネットワークオーディオプレーヤーで楽しむ「ハイレゾ」

序章 『ハイレゾ』って、すごいの???

縁があって、こんな体験レポートを書かせていただくことになった。きっかけは友人とCEATECを見に行った時の話である。 『ハイレゾ』なる商品が数々並べてあるコーナーがあった。「最近『ハイレゾ』って言葉をよく聞くけど、そんなにいいものなの?」とオーディオ好きで仕事もオーディオ関連のその友人に私が話し掛けると、彼は「今頃何を言うのかね!?」と言いながら冷ややかに薄ら笑いを浮かべた。そしてその彼の口から出た言葉が「ちょっと今度機材を貸すから、ハイレゾ体験してみない?? その代わりに体験レポートを書いてね!」。

私はこれを読んでいる方々から期待されるような純粋なオーディオマニアではないが、映画好きが高じて、リビングに5.1chサラウンド環境を構築し、週末はブルーレイディスクで映画を再生して楽しんでいる者である。 AVアンプやスピーカーにはそこそこ金を掛けているが、2chこそがオーディオだ!という声も時々聞くくらいだから、少し再生環境の方向性が違うのじゃないの?と思い、こんな組合せで大丈夫か?とその友人に聞いてみたが、「まあいいんじゃないか??メインスピーカーがしっかりしているし、大丈夫大丈夫!」とあっけらかんとした態度。

数年前から、パソコンに落としてきた音楽ファイルを、パソコンの外に移動させて再生するときれいな音で楽しめるというPCオーディオという商品が流行ってきているのは知っていたが、気が付くと今やオーディオの世界は、PCオーディオが進化して『ハイレゾ』一色になっていた。家電量販店を覗くと、各社からいろんなハイレゾ商品が出ている。数年前に見た時は大して魅力的に見えなかったこの領域が、今はオーディオ商品の中核になっていたので驚いてしまった。

『ハイレゾ』はCDよりもスペックが上だという話だが、私の耳にそんな音が聞こえる気がしないのだけど、そんなに盛り上がっているのなら、是非とも聞いてみたい!とセットの到着を心待ちにした。

第一章 開封

さてさて、友人から届いたセットというのが、マランツのNA8005というネットワークオーディオプレーヤーだった。ネットワークオーディオ初体験の私としては、ディスクを再生する機械と違って、何から手を付ければいいのか想像がつかない。ドキドキしながら箱を開けて本体を取り出す。持ち上げるとなかなかズッシリとした重みがある。7.2Kgだそうだ。ディスクドライブやHDDも入ってないのだから、セットの中にはメイン基板と電源くらいしかないだろうに、この重さ。これはなかなかなものだ。

ひとまず、ラックの上に置く。マランツの製品は、このプレーヤーに限らず、顔にアイデンティティーを持たせてある。平ぺったい顔をした他の商品と並べて見ると、尚のことそのお洒落なフォルムが際立つ。サイドにかけてのカーブも特徴的だが、ボタンの配置も非常にキレイで、置いてあるだけでも手にした喜びを感じるのではないだろうか。

天板をトントンと軽くノックしてみると、ゴンゴンという音がする。けっこう厚みがありそうだ。背面も軽くノックしてみると剛性がしっかりしてそうな音。普通に触るだけでは浮きや歪が見られないガッチリとした重厚感のある作りになっている。持ってみるとセットの下の方に思った以上に重みを感じる。

裏返してみると、おー、これがカタログに書いてあった、ダブルレイヤードボトムシャーシだな。ネジがいっぱい見えるところからも、しっかりと固定し、作り込まれている様子が分かる。これは非常に期待が高まる!

第ニ章 配線

では配線に入ろう。ネットワークオーディオって、特別なケーブルが要るんだろうか?とドキドキしながら背面を見る。

まずは背面から向かって左端にあるアナログ出力。真鍮の削り出しだそうで、なかなか気合が入っている。それに、お~っと、ピッチが広いぞ! こういうところに私は魅力を感じるのである。左右の出力回路に余裕を持たせてクロストークを軽減する配慮だが、最近はこういった余裕というものを大事にした商品が少ないので、このピッチが広いというところにいたく感心した。ただ、端子のモールド部の色が両方とも黒で、赤や白じゃないのが残念。慎重にLと書いてある方に白いピンジャックを、Rと書いてある方に赤いピンジャックを差し込む。

背面の真ん中には、デジタル系の端子が並ぶ。同軸/光デジタルは入力も出力も用意されている。USBのBコネクタはパソコンとダイレクトに接続するための端子で、LAN端子はホームネットワークに繋ぐためのもの。同軸/光デジタルのデジタルインターフェースでアンプと接続して、アンプでアナログに変換するとNA8005の実力のほどが見えてこないので、今回はアナログ接続だけ確認することにした。また、これらデジタルインターフェースの出力を止めることができるといううれしい機能が搭載されている。

さて、背面から向かって右端にACインレットが配置されている。入出力端子のほとんどが金メッキなのに、このACインレットは金メッキじゃない。それと、付属の電源コードは極性が分かるようになっておらず、また取扱説明書にも極性に関する記述が無い。これは少々残念でならない。まあ、差し替えて音を聞き比べてみることにしよう。

消費電力が30wもあるそうで、太目な電源コードが同梱されている。

で、こちらがリモコン。 ダイレクトに動作するキーが並んでいて、分かりやすい。

第三章 電源投入!

とりあえず、電源コードとアナログ出力、LAN端子を接続して、いよいよ電源を投入!

お、表示パネルに「Marantz」の文字。
続いて、「起動中」の表示。 文字も大きくて読みやすい。

   

第四章 再生(USBメモリー)

さて、友人がNASを貸してくれたのだが、そこまでやらなくても、ちょっと音を聴いたり出来ないものかなぁと思っていたら、フロントのUSB端子にUSBメモリーを挿しこめばそれで再生ができることが分かった。iPodやiPhoneからでも再生できるらしいが、私はこれらを持ちわせてないので、USBメモリーに音楽ファイルを入れて音を出してみることにした。

早速、入力をフロントのUSB端子に切り替えよう。

左下のINPUTのボタンを押すたびに、入力端子が切り替わる。

   

おっと、USBメモリーをまだ挿してなかった・・・

USBメモリーを挿しこむと、読み込みを開始。

音源は、e-Onkyo、HQM、moraといった配信サイトからダウンロードしてきた。

USBメモリーの中のファイルやホルダーが表示パネルに表示されるので、矢印キーや決定キーを使って選択していくと あっという間に再生ができた! 意外と簡単!

本題である音の感想。
我が家のシステムではブルーレイディスクやCDの再生がほとんどの使い方だったが、初めての『ハイレゾ』の印象は、
“このシステムは、こんなにいい音が出るものだったのか!”
という驚きであった。ふ~ん、部屋の空気までが変わって感じる。これが『ハイレゾ』ってものなのか、ちょっと感動。

最初に再生した曲は、e-Onkyoサイトで人気ランキング7位に入っていた Bill Evans Trio のアルバム 「Waltz For Debby」 の中から、My Romance [WAV 192kHz/24bit]である。大好きな Bill Evansのピアノのタッチがどんなふうに聞こえるのか、そこから確認したかったからだ。

このアルバムは、ニューヨークのライブハウス「ヴィレッジ・ヴァンガード」で収録されたものなので、運ばれてくるグラスがあたる音なども入っているのだが、それもすごくリアルに聞こえるほど、会場の空気感が伝わってきた。

久しぶりに音量をぐっと上げたくなった。
近所迷惑も顧みず、ぐいっとアンプのボリュームを回してみた。まずは音に厚みを感じられる。力強さが感じられると言った方がいいのかもしれないが、にもかかわらず、Bill Evansらしい柔らかいタッチがちゃんと伝わってくるのだから非常に心地がいい。

「Waltz For Debby」は古い録音なので、次は最近の曲(といっても2年も前になるが)を視聴してみる。Paul McCartneyのアルバム 「Kisses On The Bottom」 から、 I’m Gonna Sit Right Down And Write Myself A Letter[FLAC 96kHz/24bit] である。moraサイトで11月から配信が開始されたばかりらしく、たまたまその記事が目に留まったので落としてみた。

この曲はCDでも聞いたことがあったので、そのイメージからすると、これもハイレゾらしさなのだろうが、ポールの声のリアルさが印象深い。他にも、各々の楽器がリズミカルに弾むような音に聞こえて、その存在感が楽しさを演出してくれる。

上を見てしまうと、また贅沢が言いたくなるものである。
なんだか真ん中に音が寄り過ぎじゃないだろうか?と思った。音に力強さがあることで、真ん中に寄っている錯覚を起こしているのか? もっと広がりがあっても良さそうだけど・・・と思っていたら、そう言えば、電源の極性が分からないままだったなぁということを思い出しだ。

いったん電源を落としてコンセントを逆に挿し直した。曲が始まると今度は足元の方まで音が広がって聞こえる。徐々にいろんな楽器が音を出して行くと両手を広げて音を掴みたくなるように楽器の位置が明瞭に分かるようになった。バランスが良くなった。ポールが歌い始める頃には全体的に体を覆うように音が広がり、クリアなサウンドにウキウキする。本来はこういうものだったのね!と納得。

『ハイレゾ』すごい!
S/Nがいいこともあるだろうが、こんなに大きな音にして聞いても嫌な気がしないし、広がった音にも関わらず、スカスカな感じがしない。細かな音がたくさん見えるような気がする。

次は女性ボーカルを聞いてみよう。「Kisses On The Bottom」にも参加しているDiana Krallのアルバム「The Look Of Love」から、’S Wonderful [Flac 96KHz/24bit] (mora)

Diana Krall という人は、私の大好きなジャズボーカリストであるが、いっけん投げやりに歌っている感じに聞こえるのに、なぜか魅かれる艶やかな声の持ち主なのである。『ハイレゾ』って、すごいなぁと思ったのは、艶やかな声がさらに艶やかに聞こえる。ギターの弦を爪弾く音にしても、非常に細やかになるが、決して嫌な音にはならない。

更に欲が出て来て、電源の極性であれだけ音が変わったので、電源コードをいいものに代えたらどうなるんだろうか?と試してみた。
さらに磨きが掛かって、これまた驚いた!

息づかいがリアルになるなんて、どこにでも転がっている言葉だが、まさに目の前に Diana Krall が居るのではないかと思うほど、口から出た音というか空気が見えるようである。それに加えて、ウッドベースの響きが少し窮屈に感じていたが、すごく自然に広がった。きっと音の消え際の細かな音までが聞こえるようになったのであろう。音の立ち上がりもぐっと引き締まった感じだし、でもまろやかな味わいも感じられるのだから不思議である。すべてがより良く感じて、安心感みたいなものがぐっと増した。NA8005の潜在的な再生能力の高さを感じた。

この後も、定番のEaglesの 「Hotel California」 [FLAC 192kHz/24bit](e-Onkyo) や Karajan指揮の 「Beethoven Symphonies 3 & 4」 [FLAC 96kHz/24bit](HQM) など何曲か落としてきて聞いたが、どれも素晴らしさを感じられて、満足でお腹がいっぱいになった。

   

第五章 再生(DLNA)

USBメモリーの再生だけで十分満喫できたので、他にまだやれることがあることを忘れそうである。レポートのためにと言うのも変だが、せっかく友人がNASを貸してくれたのだから、その操作も確認しなくっちゃ!

では、まず入力切替で、Music Serverを選ぶ。

すご~い、なんの設定もしてないのに、ちゃんとNASが見えている。

これから先は、NASの中のファイルやホルダーが表示パネルに表示されるので、矢印キーや決定キーを使って選択していくと、

   

あれまぁ、あっという間に再生ができた! これまた超簡単!

音に関しては、USBメモリーの再生とDLNAの再生で差は感じなかった。

ちなみに2014/11月現在、e-Onkyoサイトの「 Hotel California 」は、[ FLAC 96kHz/24bit ]が¥2571、 [ FLAC 192kHz/24bit ]が¥3086とサンプリング周波数によって値段に差が付けてある。両方購入して聞き比べしてみたいという衝動に駆られそうになったが、今回は高い方だけ買っておくことにした。どちらもアルバム販売しかしていないので、両方買うのは、かなりハードルが高い(^_^;)

誰もが知るあのイントロを奏でる12弦ギターの響き、ドラムスの叩き込みには力があり、そして男っぽい歌声。どれもが素晴らしい! リズミカルで音がイキイキと感じられて、本当にこれは気持ちがいい。

第六章 リモートアプリ

さてさて、ネットワークオーディオには、スマホやタブレットからリモート操作が出来るという特長があるらしい。マランツ商品のための <Marantz Remote App> というアプリがある。私はアンドロイド系のタブレットを使っているので、Google Play からダウンロードしてきた。もちろん無料。非常に分かりやすいビジュアル構成になっているので、なんら迷うことなくサクサクと再生動作まで辿り着いた。

画面下半分のアイコンで、入力切替ができる。
上半分には、今Music Serverが選択されていることを示している。

Music Serverに入力切替すると、自動的にNASを見つけてくれた。

NASをクリックすると、NASの中のホルダー構成が見える。これを探って再生したいファイルを探す。

   

では、Hotel Californiaを再生してみよう!

再生できた。 なんだ、これも簡単だ!

入力切替をUSBにすれば、USBメモリーの中が見えて、同じようにリモート操作が可能だ。

第七章 再生(USB-DAC)

背面のUSB-B端子とパソコンとをUSBケーブルで接続すると、パソコンの中にあるハイレゾファイルをNA8005の中でアナログにしてくれる機能がある。

そのためには、パソコン側にふたつの準備が必要となる。一つはドライバー、もう一つは音楽再生ソフトのインストールである。ドライバーはNA8005を紹介している HP からダウンロードするようになっており、音楽再生ソフトにはFoobar2000を使う。

残念ながら・・・
今回はNA8005を借用できた時間も少なかったので、この機能を含め まだまだ出来る機能があるのだが、ここで時間切れ。

最終章 体験を終えて

『ハイレゾ』はすごい!

この一言に尽きる。久しぶりに気持ちよく、じっくりと音楽を聴いた。

『ハイレゾ』はCDよりもスペックが上だというので、私の耳にそんな音が聞こえる気がしないのだけど、と思っていたが、高い音が聞こえるとかそういう価値感ではないことがよく分かった。楽しみが何倍にも膨らんでいくことが体験できた。

そして『ハイレゾ』の素晴らしさを体感させてくれたNA8005に感謝したい。音もいいし、使い方も簡単だし、素直にいい商品だと思った。家電量販店では、ポイント還元で実質10万円を切っているようだ。年末のボーナスで買うか買わないか、とても迷っているところである。

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