商品レポート

fidata ネットワークオーディオサーバー HFAS1-XS20 体験レポート

現在、市場にはネットワークオーディオを楽しむための多くの機器が存在し、いろいろなシチュエーションでハイレゾコンテンツを楽しめるようになってきた。ネットワークオーディオの楽しさは音質が優れていることは当然として、再生のユーティリティが非常に高く、タブレットなどを使って自由自在に曲を選び再生する簡便さは、ディスク再生中心のオーディオには無かったもので、私もすっかりその世界にはまっている。
ソース機器を大別するとPCとネットワークプレーヤとなるが、私は自分のオーディオ機器にPCを持ち込む気持ちにどうしてもなれず、ネットワークプレーヤで日々楽しんでいる。そんなネットワークオーディオに無くてはならないのがNASである。ここに音楽を格納し、ネットワークプレーヤで再生することが私のネットワークオーディオのデフォルトゆえ、NASには常に関心をもっている。
もともとはPCの周辺機器であったNASであるが、ネットワークオーディオへの応用が増えるに従い、NASメーカー各社からオーディオ用を謳ったNASが多く登場してきた。
今回レポートするfidata HFAS1-XS20はその中でも高級オーディオに匹敵するこだわりと品質を有するネットワークオーディオサーバーである。

私が愛用しているNASは元祖オーディオ用NASともいえるQNAP TS119。これに50VAのトロイダルトランスと超ローノイズリニアレギュレータを組み合わせた外部電源とワイヤーワールドのELP電源ケーブル、フローティング型インシュレータなどを組み合わせ、高音質化を図った特別仕様のNASになっている。

そのNASに対してfidataの高級ネットワークオーディオサーバーがどのような世界を見せてくれるのか?期待に胸が高鳴る。

外観

早速HFAS1-XS20を眺めてみる。


Fig1:HFAS1-XS20外観

TS119はいかにもNAS然とした外観であるが、HFAS1-XS20は高級オーディオ機器そのもの。むやみにフルサイズ化せずに、必要最小限の大きさにまとまっていることに好感がもてる。マテリアルは存分に贅をつくしており、天板の加工はひときわ異彩を放つ。精密なバイブレーション研磨による和紙をイメージさせる温かみのある仕上げだ。シャーシの留構造も和ダンスに習ったという他ではあまり見たことのない凝った構造になっている。まさに高級オーディオ機器にふさわしいこだわりのある仕上げ、加工が施されている。
質量もしっかりとあり、美しい外観デザインとともに、所有欲を満たしてくれる。

HFAS1-XS20の外観はその美しさに見とれてしまう陶酔を味わわせてくれる。

一方、ペリフェラルインターフェースはミニマムともいえる割り切りで、LANが二系統、USBが一系統という思い切りの良さ。操作キーも電源キーがフロントパネルにあるのみ。いたずらに高機能を求めることなく、ひたすら製品の純度を高めた開発思想に大いに感銘をうける。

セッティング

試聴に先立ちまずはセッティングしなくてはならない。
ネットワークオーディオを楽しむ場合の最初のハードルがここだと考える。事実、TS119を導入したときには、設定が簡単と言われていたTS119ではあるが、それでも設定が完了するまでマニュアルと格闘した記憶がある。

時代は流れ、簡単に設定できるようになったと言われるHFAS1-XS20はどうであろうか?

LANをつなぎ、電源を入れる。

・・・・以上、終了である。

あまりのあっけなさに拍子抜けするほどであるが、たったこれだけで、PC上にHFAS1-XS20のアイコンが現れ、ファイルの操作が出来る状態になってしまう。LANの環境が整っていることが前提ではあるが、その状態ならば簡単にネットワークに接続し、再生環境が整ってしまう。これは素晴らしいことだと思う。

試聴

さて、いよいよ機器に組み込んでの試聴である。

私の装置は下記のようなものである。
ネットワークプレーヤ OPPO BDP105D(改)
プリアンプ      マッキントッシュC34V(改)
デジタルイコライザー リアルサウンドラボAPEQ2 DIO
チャンネルデバイダー アシュレイXR1001(改)
パワーアンプ     マッキントッシュMC2600(低域)
           トーマン S75MK2 ×2(中域、高域)
スピーカー      JBL オリンパスS8R

スピーカーは50年以上前のビンテージ品である。こんなスピーカーでネットワークオーディオサーバーの、ハイレゾの良さがわかるのか?と心配されるかもしれないが然に非ず。4096バンドのFIRデジタルイコライザーによりリスニングルーム内のスピーカー直前の空間にて40Hz~15KHz±1dBの音響パワー特性と3ウェイのユニットの完璧なタイムアライメントを実現している。ビンテージの熱きサウンドとハイエンドの広大な音場感を両立している。

コンテンツは聴きなれている10曲ほどをハイレゾやCDリッピングから織り交ぜて取り込んだ。取り込みも極めて簡単。だって、コピペするだけだから、、、

一刻も早く音が聴きたかったので、通常のカテゴリ6のLANケーブルで接続し、セットはラックの上にあるプリの上に置いた適当セッティング状態で音を聴いてみた。

コントローラアプリはmconnectHD。これでTS119とHFAS1-XS20を切り替えながら比較試聴する。

その差は一聴歴然だった。

もっとも顕著な違いは低域の厚み、充実感であろう。そして、音がしっかりと濃いのである。ゆえに、音楽のタメとか抑揚がより豊富に再現され、音楽がぐっとこちらに近づいてきてくれる。
徹底した低ノイズ設計と強固な機構設計の賜物と思う。
しかし、この状態では中高域にやや違和感のある硬質感がある。そこで、本格的なセッティングを試みる。
まずは床にフィンラドバーチを75mmに積層したオーディオボードを置き、その上にセッティング。LANケーブルもELECOM製のカテゴリ7に交換。


Fig2:75mmのフィンランドバーチ製オーディオボードにセッティング

このセッティングで中高域の硬質感は霧散し、それは透明感に昇華した。結果、音場感はさらに広大になり、しかし、しなやかで柔らかい音色もしっかりと再現してくれる。表現力のダイナミックレンジが格段に向上。この状態での音質で十分とも思えたが、さらに磁力によるフローティング構造を採用した自作のフローティングボードを積層ボードと機器の間に挿入。


Fig3:積層ボード+磁気フローティングボードにセッティング

積層ボードの固有音が解消され、細かなディティールが一層豊かになる。例えば女性ボーカルなどで唇の動きが見えるように描かれ、音色が色っぽくなる。結果、歌が一層こちらに伝わってくる。

他の動作モード、接続ポートなど

以上はHFAS1-XS20をネットワークプレーヤと組み合わせてNASとして機能させた音のインプレだが、この機器はDMR機能そのものを内蔵しており、例えばUSB-DACなどと組み合わせることで、ネットワークプレーヤとして使うことができる。

OPPO BDP105DはUSB-DACとしても活用できるので、HFAS1-XS20をネットワークプレーヤとして活用した場合の音質差を検証してみた。

接続はこれも簡単。HFAS1-XS20のUSBポートとOPPO BDP105Dの背面USBポートを接続するだけ。
HFAS1-XS20の操作にあたっては動作検証済というお墨付きのついたLINNが公開しているKinskyというメディアプレーヤを使った。

OPPO BDP105Dの入力切替で背面USBポートを選択し、メディアプレーヤでプレーヤとソースを選べば準備完了。

ネットワークプレーヤとして使った場合の音質差は非常におもしろいものとなった。音の透徹感、空間のすっきりした見通しを重視するならUSB接続が優れており、一方、よりエモーショナル部分の再現性ではNAS接続に分があると聴いた。ただ、これは優劣と言う次元ではなく、使い手がどちらの表現をより好むのか、そういう視点のみで選択していいと思う。曲によって使い分けることも難しくはない。どちらの動作モードであっても、魅惑的な音であることに変わりはない。

もう一点。

HFAS1-XS20にはLANポートが二つある。

当初、TS119のように特に疑問なくPC用のポートからHUB経由でOPPO BDP105Dを接続していたが、もう一方のLANポートであるAUDIO用LANを使えばHUBをパスしてダイレクトにOPPO BDP105Dを接続できる。

早速試してみると、なるほど、確かに音の純度が増しSN感がさらに良くなる印象で、これはAudioポートの方がハッキリ優れていると思う。

詳細はわからないが、PC用ポートよりもさらに厳重なノイズ対策が施されているような印象だ。

総評

総じて、HFAS1-XS20の音は過度な主張をしてこない。優れたオーディオ機器の中には「どうだ!これがXXXだ!」と言わんばかりの主張をしてくる製品が少なくないが、HFAS1-XS20はひたすらコンテンツに誠実であると感じる。積極的に音を美化したり、演出感のようなものを聴かせることなく、ただただ、コンテンツのあるがままの情報を最大限に引出し、ネットワークプレーヤなりUSB-DACに伝えてくれる。

いかにも日本製らしい透明感と清潔感を聴かせる一方で、音楽の豊かさをスポイルするようなことがない。安価な製品との最大の差は、この中低域の充実感に如実にあらわれる。

この製品はただハードウェアを設計し製造したようなものではなく、たくさんの音楽を再生しながら、開発者の魂を込めて開発された製品だと確信できる。

NASによる音質の変化は自分でも体験してきており、ゆえに、いろいろな対策を施してきた。しかし、HFAS1-XS20は、そういう手間暇をかけた特別な自家用のNASが、まるで歯が立たないほどの音質をさらりと実現してくれる。ネットワークオーディオは確かに簡単に取り組むことの出来る装置もたくさんある。しかし、すでに高額なディスクプレーヤを所有し、日々幸せなディスク再生生活を送っているオーディオマニアにとっては、簡単&安価=満足とは決してならない。

もちろん、操作や接続環境構築は簡単であった方がいい。しかし、外観や音質のパフォーマンスは安価であることよりも所有感を満たしディスク再生に勝るとも劣らないクオリティを提供してくれなければ、
そもそもネットワークオーディオを実践する意味はないと思う。

その視点で見た場合、HFAS1-XS20はマテリアル、デザイン、組み立て精度、そして音質のパフォーマンスが極めて高次元にバランスした魅惑的な製品であり、少しでも良い音で音楽に浸りたい、そういう熱き思いのオーディオマニアにこそ使っていただきたい逸品だ。

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