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2019年4月11日 日本オーディオ協会が選んだおすすめソフト

聴きどころ

今回はタワーレコード・オリジナル企画盤『ヴィンテージSA-CDコレクション』の第16弾の3作品を取り上げる。まず1作目はリヒテルがドイツ・グラモフォンに録音した協奏曲全8曲を3枚のディスクに収めたアルバムで、収録されている曲目はシューマン、モーツァルト(20番)、プロコフィエフ(5番)、ベートーヴェン(3番)、チャイコフスキー(1番)、ラフマニノフ(2番)の各ピアノ協奏曲と、シューマンとベートーヴェンの小品各1曲である。録音は1958年から1962年と半世紀以上前であるが、今回オリジナルマスターテープから新たにデジタルマスタリングしたとのことで、その音質はクリアーでよりマスターテープに近いものになっていると感じた。ピアノは曲により音質差はあるが、それは演奏者リヒテルの意図(曲目の解釈)よるものと感じれられ、その差がはっきりわかるということは当時の録音の素晴らしの証しではないかと思う。オーケストラは、弦はさわやかで、古い録音によくあるヒステリック感は全くなく、管は粒立ちよく奏でられ、定位感も良く、オーケストラ全体のステージ感も良く、とてもバランスの良い音場を再現している。軽やかなモーツァルトからメリハリのあるプロコフィエフまで全て魅力的で素晴らしい演奏であるが、何といってもラフマニノフの2番は圧巻である。冒頭のピアノの重厚な響きから圧倒される。スピード感のあるカラヤンとのチャイコフスキーも素晴らしいが、このリヒテルのラフマニノフの2番を、SA-CDの高音質で聞く為だけでも、このアルバムには大きな価値があると思う。

評:JAS