2018年4月12日 日本オーディオ協会が選んだおすすめソフト
聴きどころ
タワーレコード×Sony Classical究極のSACDハイブリッド・コレクション第4弾から2作品を取り上げる。まず1作目は、ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団の演奏で、東欧、ロシアの作曲家による20世紀前半の個性的なオーケストラ曲集。1曲目はヤナーチェク「シンフォニエッタ」。録音は1965年で、3トラックオリジナルアナログマスターテープから新たにDSD 2トラックステレオにリマスターされたとのことだが、付属の増田良介氏の解説に、「アメリカのオーディオ評論家ハリー・ピアソンがThe Absolute Sound誌に掲載した、欧米ではよく知られた『高音質LPリスト』にも載っている」とあるが、素晴らしい録音である。管楽器が活躍する楽曲であり、その管楽器は伸びがあり、響き良く録られ、オーケストラ空間に3次元的に定位し気持ちいい。弦は多少スリムな音質であるが切れがあり、それが管楽器とマッチし、透明感のあるオーケストラサウンドを生みだしている。残りの2曲、コダーイ「ハーリ・ヤーノシュ」とプロコフィエフ「キージェ中尉」は1969年の録音で、オリジナルマスターは4トラックとのこと。付属の「リマスタリング・ノート」によると、4トラック録音の場合、3トラックでオーケストラ全体を、残りの1トラックにソロ楽器もしくは特定のソロパートが録られ、「ハーリ・ヤーノシュ」ではツィンバロン、「キージェ中尉」ではコルネットとコントラバスのソロに充てられたとのことである。ともにこの4トラックのオリジナルアナログマスターから新たにDSD 2トラックステレオにリマスターされているが、「ハーリ・ヤーノシュ」では5曲目の間奏曲で、哀愁のある弦楽器の合奏のメロディーとクリアーでクリスプな音質のツィンバロンが絶妙にマッチし心地よい音楽を奏でている。「キージェ中尉」はオーケストラ全体に厚みが増し、音質も滑らかで物語性のある音楽が一層豊かなものになっている。付属のライナーノーツも充実しており、ジョージ・セルとクリーヴランド管弦楽団の極め付きの名演奏を高音質にリマスターしたとても素晴らしい作品である。
評:JAS