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2018年4月3日 日本オーディオ協会が選んだおすすめソフト

聴きどころ

タワーレコード企画盤『ヴィンテージSA-CDコレクション』の第9弾としてこの1月に発売されたアンセルメ指揮スイス・ロマンド管弦楽団のサン=サーンスの交響曲第3番《オルガン付き》とフランクの交響曲がカップリングされたアルバムを取り上げる。このアルバムの一曲サン=サーンスの交響曲第3番は、1960年代後半からのHiFiオーディオの本格的普及時代に、ミュンシュ指揮ボストン交響楽団の演奏と共に、パイプオルガンの32フィート管(約16Hz)の音が再生できるかどうかで話題になっていたこともあり、オーディオファイルの方々にはなじみのある作品と思う。当時筆者はダイヤトーンのP-610を自作ボックスに入れてオーディオを始めた時代でしたので16Hz再生とかは全く遠い世界の話題でしたが…。余談はさておき、オルガンの重低音は第一楽章の2部から入ってくるが、筆者がクラシック音楽の試聴に使用している欧州系の25㎝ウーファー密閉ブックシェルフスピーカーでは流石に16Hz再生はかなわないものの、その倍音成分がきれいに再生されており、かなりの低音感を楽しむことが出来る。ダイナミックレンジを広く取るためかカッティングレベルは低く抑えられておりアンプのボリュームをかなり上げないといけないが、うねるような重量感をもった低音が再生され、動き(音階)もはっきりしていて結構感動ものである。オーケストラは、弦が左右に大きく広がり、その中に伸びがあり彩も素晴らしい管楽器が奥行き感をもって定位し、ステージ感をもって再生される。全体に重心が低くオルガンとのマッチングが気持ちよい。演奏はゆっくり目で、重厚感とその上に展開されるカラフルなオーケストレーションが素晴らしく、優秀録音と共にまさしくアンセルメの名演で、LPで楽しんでいた方々のみならず、多くのオーディオファンの方々に聞いていただきたい推薦盤である。さて、ミュンシュ指揮ボストン交響楽団の演奏もSA-CD化されており、せっかくなので試聴した。試聴したのはBMG盤(品番:82876-61387-2)で、2chステレオと3トラックオリジナル録音をそのままSA-CDマルチチャンネル(L、R、センターの3ch)に収めた2種類のSA-CD音源が収録されているものである。まず演奏はアンセルメ盤より早め(演奏時間比較:ミュンシュ34:44、アンセルメ37:32)で、明るくメリハリがあり、オルガンは控えだが、その上に各楽器が分離よくクリアーに鳴り、全体にバランスが取れたスピード感のある演奏で、アンセルメ盤とは好みが分かれるが、こちらも名演、優秀録音盤である。特にオリジナル3トラック再生は、センタースピーカーが加わることで情報量、定位感が増し、厚みのある一次元上がった音質と言える。左右に配置された弦はセンタースピーカーと左右のスピーカー間に定位し、管楽器はセンタースピーカーから再生され残響成分が左右のスピーカーに流れ、素晴らしい定位感と音場感が再現されている。SA-CDマルチチャネル対応プレーヤーとAVアンプ等との組み合わせでマルチチャンネル再生環境をお持ちの方は是非1950年代後半から60年代初期の3トラック録音盤をお聴きすることも併せてお勧めする。

評:JAS