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2017年10月30日 日本オーディオ協会が選んだおすすめソフト

聴きどころ

最後は、現在のバイオリンの巨匠ギドン・クレーメルが新進気鋭の30歳の時に録音したシベリウスのバイオリン協奏曲とシュニトケの合奏協奏曲。バックはロジェストヴェンスキー指揮のロンドン交響楽団。シベリウスは、クレーメルが1970年のチャイコフスキー国際コンクール優勝時に本戦で弾いた曲ということで、気迫の演奏である。バイオリンは伸びやかだが緊張感のある音質で、オーケストラは左右に大きく広がり各楽器の定位感も良くダイナミックに展開する。特に第3楽章はクレーメルのバイオリンがオーケストラの上を駆け回ると言っていいほどの気持ちのいい演奏で、圧巻である。シュニトケの合奏協奏曲はこの録音が世界初録音となる現代音楽作品。現代音楽というだけで難解とかで敬遠気味であるが、終曲にタンゴのリズム/メロディーが入るなど、それぞれの楽章で曲風が変化し楽しめる作品となっている。更に最大の特徴は、弦の間にコインを挟んで音色を変えている「プリペアード・ピアノ」をはじめ、楽器の可能性を探るかのように、それぞれの楽器から様々な音色が色々な形で再現されるところにあると思う。それらはシャープでクリアーな音質で、高品位な録音は十分にそれらを再現し、とても魅力的な作品に仕上がっている。現在70歳になったクレーメルは今でも新しいことへの取り組みに積極的であるが、この作品はクレーメルの原点となった作品として多くの方にお薦めしたい名盤である。

評:JAS