2017年10月6日 日本オーディオ協会が選んだおすすめソフト
聴きどころ
2作目は、チックコリアトリオのARC。ジャンル的にはフリージャズに入る作品。チックコリアは1970年に入ってまもなくマイルスデイビスのグループから離れ、デイヴホランド(b)、バリーアルトシュル(ds)と「Circle」を結成し、1971年に掛け当作品を含み、フリージャズ的な活動へ向くが、1972年には「Return To Forever」を結成し、その後「エレクトリックバンド」「アコースティックバンド」等、多様な音楽に取組み、その音楽スタイルの変遷は大きい。しかし常に音楽シーンをけん引してきたと思う。その意味でこの多少難解な「ARC」というアルバムはチックコリアの音楽のベースとなった重要な作品の一つと思う。作品はフリージャズといっても、名手3人によるジャズならではのインプロビゼーションは素晴らしく、そのスピード感には圧倒される。録音は、ピアノの低音部は重心低く、且つ中高域の響はクリアーで美しく、ドラムスの空間への広がり、特にシンバルの切れはシャープで気持ちいい。ベースは右チャンネルに位置し粘りのある低音を奏でている。ライナーノートに「『音の悪いフリージャズは聞けない』と言ういい方がある」とあるが、まさにこの素晴らしい録音がチックコリアの音楽を普遍なものにしている。この名録音に名盤ありである。
評:JAS