いい音 おすすめソフト

2016年7月25日 日本オーディオ協会が選んだおすすめソフト

聴きどころ

高品位録音作品をリリースすることで知られるオクタヴィア・レコードから歴史的録音の発売である。若林俊介氏がラジオ番組用に録音した作品で、1962年12月20日上野の東京文化会館でのシャルル・ミュンシュ指揮、日本フィルハーモニー交響楽団のライブである。当然、今から半世紀前の録音であるから、音質面では今のハイレゾ録音には及ばない。しかし、同年までボストン交響楽団の常任指揮者であったシャルル・ミュンシュが単身来日し、創立まだ8年の日フィルを指揮した歴史的録音の発売の意義は大きいと思う。フルトベングラーのベートーベン、トスカニーニのレスピーギ、ワルターのマーラー、近年の録音に比較し音質は劣るとも、その音楽は人の心を動かす。やはり音楽はその演奏の素晴らしさが要である。しかし、音質は良いことに越したことはない。その意味で、今回オーディオファイルレーベルから古い音源でも最良のコンディションでリリースされることの意義は大きい。前置きが長くなったが、素晴らしい演奏である。シャルル・ミュンシュのブラームス交響曲1番は1968年録音のパリ管との演奏が有名であるが、それに勝るとも劣らない演奏である。黎明期にあった日本のオーケストラが世界一流のオケの演奏に全く引けを取っていない。当時生でこの演奏を聴いた人の感動は計り知れなかったと思う。演奏はパリ管同様、遅めではあるがそれが緊張感、重量感を出し、加えて、セッション録音のパリ管に対し、ライブであるが故と思われるが、スピード感があり、ライブの高揚感は大きい。また、音質の関しても、第二楽章のホルンを伴ったバイオリン独奏、随所で奏でられる管楽器一つ一つの音色等ではライブの空気感が感じられ、確かにDレンジは狭いが、当時の若林録音のすばらしさを感じられる。盤ごとのマスタリングにもよると思うが、パリ サル・ワグラムでのセッション録音のパリ管に比較し、録音の質は数段上と言える。日フィル創立60周年の記念盤ということもあるが、多くのクラシックファンに聞いていただきたい歴史的名盤である。

評:JAS