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2015年3月12日 日本オーディオ協会が選んだおすすめソフト

聴きどころ

パク・キュヒがブラジル音楽を取り上げたアルバム。パクは3歳の時に父親の仕事で日本に滞在し、母親が通った音楽教室でギターを始め、15歳からは日本に移り住み、2004年に日本音楽大学入学し、その後数々のコンクールで優勝したギター界の新星。2011年2月10日の武蔵野文化会館小ホールでの演奏会がNHKで放映された時インタビューからはとてもかわいい女子と言う感じだか、自身の演奏スタイルとして、「自然で流れるような音にし、常に歌うように演奏をしたい」と話し、実際の演奏も、左手は決して大きくない手を大きく広げ、正確に且つ力強く弦を押える一方、右手は滑らかに優しく指で弦を弾き、自然で音楽性豊かな美しい音色を奏でていた。さて、今回のアルバムはブラジルの作曲家によるギター作品集。ルイス・ボンファの黒いオルフェ、アントニオ・カルロス・ジョビンのデサフィナードと言うボサノバの名曲も含まれるが、あくまで、クラシカルな音楽性豊かな演奏が聴かれる。録音は甲府コラニー文化ホールで、アコースティックな録音。極端なオンマイクではないが、ギターの音像はしっかりセンターに定位し、左右にアコースティックな響きが広がるホールを活かした自然な録音がなされている。一方、超絶技巧曲である7曲目のヴィラ・ロボスの練習曲12番では、弦の上を滑らす左指のキューと言う音がやや右上に定位し、あたかも、パクが目の前で弾いているような臨場感を再現している。10曲目のジョンゴでは、後半ギターのボディをパーカッションのように手でたたき、胴のこもり音、外周部を叩く明確なアタック音を忠実に再現している。また、8-9曲目のルイス・ボンファの2曲は温かみのあるパクらしい演奏。正確無比なパクの演奏は緩急自在、様々な音色を生み出すが、やはりパクの良さは、自然で豊かな音楽性にあり、ブラジル音楽の持つ明るさは、パクの演奏にさらに温かみを加え、いろいろシーンで何回も聞きたくなる、とても上質のアルバムである。

評:JAS