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2015年6月11日 日本オーディオ協会が選んだおすすめソフト

聴きどころ

今月はオランダ、ペンタトーンから2枚のスーパーオーディオCDを取り上げる。ディスクレビューの前に、少しペンタトーンに関して触れておきたい。
ペンタトーンは多くのスーパーオーディオCD盤をリリースしているインディーズ系のオーディオファイルレーベルとして知られているが、歴史は長くその母体は1950年代に設立されたPhilips Classicの録音センターである。その後、1973年に録音センターはオランダの中央に位置する小さな町Baarnに移り、Polyhymniaと名づけられ、当時はポリグラムの一員として数々の名録音を残していた。しかし、CD市場の縮小と共に、今でいうリストラにより、親会社であるポリグラムはPhilips Classicsの録音センターの閉鎖を決めた為、当時の4名のエンジニアがPolyhymniaの名前を踏襲し、録音サービス会社として独立した。その同じ地で2001年にPolyhymniaが得意とする5チャンネルサラウンド録音作品をリリースする為に設立されたのがペンタトーンである。従って、Polyhymniaが録音したサラウンド作品を多くリリースし、また、過去にPhilips Classic時代に録音された4チャンネル録音(RQR)のリマスター作品も多くリリースしている。
前置きが長くなったが、一作目はショスタコーヴィチの交響曲第7番「レニングラード」。指揮者は日本でも人気の高いパーヴォ・ヤルヴィ。オーケストラはロシア・ナショナル管弦楽団。録音は2014年2月モスクワ音楽院大ホールで、セッション録音となっている。
「レニングラード」は5番の「革命」と共に人気の高い作品であるが、演奏時間は70分を超え、ショスタコーヴィチ最長の交響曲である。しかし、第一楽章の第一主題後の超弱音の中から始まる聞きなれた第二主題を様々な管楽器が繰り返し奏でるあたりから一気に楽曲に引き込まれ、雄大な終曲まで、長さを忘れ、聴き通すことができる。これは、パーヴォ・ヤルヴィの曲作りの明確さと共に、Polyhymniaのサラウンド録音によるところが大きい。特に、フルオーケストラにも関わらず各楽器の粒立ちの良さとなめらかさ、また、サラウンド録音による空気感あふれる音場は、時には緊張感さえ醸し出し、サラウンド録音にたけたPolyhymniaならではの優秀録音といえる。スーパーオーディオCDサラウンドで試聴。

評:JAS