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2015年8月8日 日本オーディオ協会が選んだおすすめソフト

聴きどころ

日本人ジャズの一作目は山中千尋ピアノによるトリオ演奏。ラグライムをテーマに取り上げたアルバムだが、軽快かつ超絶技巧的なピアノ演奏に加え、彼女の曲作りはラグライムと言う古いアメリカ音楽を単に現在風にアレンジするだけではなく、山中流にとても新鮮な音楽に仕上げ直している。2曲目の有名なスコット・ジョプリンのエンターテイナーでは、古典の中に斬新さがあり、4曲目のイージー・ウィナーではキーボードとドラムで都会的な雰囲気を醸し出し、6曲目のリフレクション・ラグはロック風にと、1900年代初期のスコット・ジョプリンの音楽をまさに新鮮なこの瞬間の音楽に再創造している。加えて3曲目のメイプル・リーフ・ラグでの軽快なピアノ演奏は気持ちいい。11曲目のグレイスフル・ゴーストはミディアムテンポで、古きラグタイムを愉しむと同時に、終曲らしく山中千尋の音楽の世界の余韻を楽しむエピローグ感が出ており、アルバム構成も完成度が高い。ニューヨークのEastSide Soundスタジオで録音され、ベースの音像の上のピアノ、ドラムが左右に広がり、一体感のあるトリオ演奏録音となっている。演奏、録音共に痛快なアルバムである。

評:JAS