いい音 おすすめソフト

2020年3月23日 日本オーディオ協会が選んだおすすめソフト

聴きどころ

トランペッター類家心平の4年ぶりニューアルバムの紹介です。自身が率いるバンド名「RS5pb」(Ruike Shinpei 5 piece band)をアルバム・タイトルに冠した意欲作。足掛け8年に渡る彼ら5人の演奏が見事に一体化しており、なおかつスケールの大きな作品に仕上がってます。2016年発表の前作「UNDA」につづく横浜ランドマークスタジオでの収録で、マスタリングは鈴木Cちゃん浩二氏の手による手堅い音作りに。
アルバムは一曲目の印象が大事で「Civet」はド頭からパンチを喰らわせてくれるサウンドの塊からスタートし、そのまま引き込まれて行く展開に。二曲目バリトンサックスが加わった「Chaotic Territory 1」で緊張感も一気に高まり、三曲目「Dada」の前半で少し外してくれるのも、嬉しい展開。「Lady Jane」はローリングストーンズのカバー曲でミュートトランペットがしっとりと歌いあげてくれます。気になるのがボーナストラックとクレジットされている八曲目の「Soma」で途中から演奏がアッチェレランド(だんだん早く)しておりスネアロールから始まるけだるい曲がグングンと走っていく様子が面白い。九曲目「IO」は9分と長い演奏にチェロ、ビオラ、バイオリンが加わり、ここまでのアルバム演奏曲の熱気をゆっくりと冷ましてくれる、心憎い全体構成でプロデュースパワーに聴く者の舌を巻かせてくれます。
サウンドチェックはCD(UHQCD仕様)、FLAC24bit/96kHz、DSDの順に聴きます。すでにCD再生でトランペットの艶、特にミュートの絞り出すようなリアルな表情が良く収録されており、シンバルやスネアショットも快く突き刺さって、ベースとのからみも良く判ります。アルバム全体にアップテンポな曲が多いのですが、フッとした瞬間のピアノの響きが空間に拡がっていく様子も聴きとれます。これがFLACでの再生になると全体のメリハリが効き、よりオーディオ機器が活きいきとして来るので、ハイレゾの魅力とありがたみが感じられます。ハイレゾでもDSDとなると少し方向性が違い、現場スタジオのサウンドが聴こえ、演奏者達の息遣い、ノリ、演奏中の合図や目くばせまでが見えるような暖かくも切れの良いサウンドに変わります。

評:JAS