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Vol.37 耳を大切に

歳を重ねて老眼を実感するのとは違い、よほど耳が遠くならない限り聴覚の衰えは感じにくいと思います。しかし実際には加齢に伴いまず高音が聴こえなくなってきます。人間の可聴周波数上限の20kHzまで聴こえるのは20歳台までです。そして徐々に中高音の感度も低下し、日常会話が聞き取りにくくなったりテレビの視聴音が大きいと指摘されたりして、初めて耳の衰えを自覚するものです。内耳の蝸牛と呼ばれる器官には有毛細胞があり、鼓膜の振動を電気信号に変換し脳に伝えています。大音量にさらされ続けるとこの有毛細胞が損傷し、二度と再生しないという説が有力です。携帯音楽プレーヤなどで大音量を聴き続けると、老人性難聴が早く訪れかねません。また高脂血症や糖尿病などの生活習慣病は、有毛細胞の老化を早めることが分かってきました。
ところで十数kHz以上の高音が聴こえなくなっても、音楽を聴いて高音不足を感じることはまず無く普通に楽しめます。耳の衰えが緩慢なので気が付かないのか、脳が補完するからなのか分かりませんが幸いなことです。職業がらスピーカを弦波信号で鳴らすことがよくあります。その時に「若い頃は〇〇kHzまで聴こえたのに・・・、でもスピーカを耳元に近づければ〇〇kHzまで聴こえるぞ・・・」などと一喜一憂していますが、年頭に当たって、末永くいい音を楽しめるように耳を大切にしていきたいと思います。

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