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2016年9月14日 日本オーディオ協会が選んだおすすめソフト

聴きどころ

7月に紹介した「ブラームス交響曲第1番」に続き、1964年、単身来日したシャルル・ミュンシュが創立間もない日本フィルハーモニー交響楽団を指揮したライブ録音から「ベルリオーズ幻想交響曲」を紹介する。「ブラームス交響曲第1番」同様、故若林俊介氏がラジオ番組用に録音した秘蔵のテープからのCD化である。シャルル・ミュンシュの幻想交響曲はボストン交響楽団、パリ管と数々の名盤が存在するが、それらに勝るとも劣らない素晴らしい演奏である。第1楽章から第2楽章は比較的緩やかなテンポで穏やかに進み、第3楽章冒頭のオーボエとイングリッシュホルンの掛け合い、その後の弦楽の広がりと管とのアンサンブルは、その丁寧でゆったりとしたテンポが「野の情景」を表現し素晴らしい。そして、第3楽章の終わり近くのオーボエとティンパニーが緊張感を高め、幻想交響曲のハイライト、第4、第5楽章につながっていく。第4楽章のティンパニーのしっかりとした低音、第5楽章後半の金管とティンパニーは大迫力であり、まさにライブならではの熱演である。音質も60年代初期の録音としては、Dレンジも広くのびやかに録られ素晴らしい。創立間もない日フィルの演奏記録というよりは、シャルル・ミュンシュの幻想交響曲の名盤の一つとして上げられる名演奏と言える。また、このCDには当時のリハーサルの一部が収録されておりとても興味深い。特に、幻想交響曲と同じ日に演奏されたラベルの「ダフニスとクロエ」第2組曲では、第3曲「General Dance」の熱のこもった演奏が本番さながらにほぼ通しで収録され、更にリハーサルの最後には、大指揮者が日フィルを指揮できたことへの感謝の気持ちを伝え、若き団員達を称えているのが印象的である。

評:JAS