日本オーディオ協会 創立70周年記念号2022autumn

『ハイレゾ、発展の10年』
私が思うエポックなハイレゾ10作品

選 加藤徹也(エソテリック)

音質の違いがよくわかるSACDとデジタルファイルの愛聴盤

Title1 『NOBU’S POPULAR SELECTION』(Sony Music/Stereo Sound) SACD

Title2 『Tchaikovsky – Korngole:Violin Concertos/Mutter(Vn)、Previn、VPO』(Deutsche Grammophon) SACD

Title3 『Unplugged/Eric Clapton』(Reprise Records/MoFi) SACD

まずSACD3作品を紹介します。PCMとは異なるデータフォーマットDSDで収録されており、空気感や臨場感の表現に優れています。この10年のハード、ソフトの進化で、その表現力はさらに向上しています。

オーディオ評論家の傅信幸氏 選曲・構成のコンピレーション盤(Title1)。耳なじみのある高音質な曲がたくさん収録されており、音質確認を忘れて、聴き入ってしまうことも。

SACDならではの音質が楽しめるのが本作(Title2)。機器の調整がうまくいくと、ムターさんの一挙手一投足を音で感じることができます。

エリック・クラプトンの1992年のパフォーマンスが収録されたMTVアンプラグド(Title3)は、Mobile Fidelity Sound Lab社のリマスタリングにより2022年にSACD化、ライブの空気感、臨場感が進化し、アナログ的な柔らかな表現も向上しています。

Title4 『Quiet Winter Night/HOFF ENSEMBLE』(2L) DSD11.2MHz、FLAC 352.8kHz/24bitほか

Title5 『イエロー・マジック・オーケストラ(2018 Bob Ludwig Remastering)/YELLOW MAGIC ORCHESTRA』(Alfa/Sony Music) FLAC96kHz/24bit

Title6 『The Dark Side of the Moon/Pink Floyd』(EMI/Pink Floyd Music) FLAC96kHz/24bitほか

Title7 『Come Away With Me/Norah Jones』(Blue Note) DSD2.8MHz、FLAC192kHz/24bitほか

Title8 『Sunset In The Blue/Melody Gardot』(Decca) FLAC96kHz/24ビット、MQA96kHz/24bitほか

Title9 『yours;Gift/溝口肇』(VAP) DSD5.6MHz、WAV96kHz/24ビットほか

Title10 『Hello, Wendy!/大野由美子+AZUMA HITOMI+Neat’s+Maika Leboutet』 DSD5.6MHz

Title4〜10はデジタルファイルとなります。新録のマスター音源は、ほぼ間違いなくハイレゾで録音されており、ハイレゾファイルとしてリリースされることは自然な流れとなりました。またアナログマスターからのハイレゾ化も積極的に行われ、名プロデューサーや新テクノロジーによって、過去の名作が鮮やかに甦り、新たな輝きを放つことも多いです。

ノルウェーの高音質レーベル2Lの手によるホフ・アンサンブルの本作(Title5)は、DSD11.2MHzやFLAC352.8kHz/24ビットなど多彩なオーディオフォーマットで入手可能です。また2Lレーベルでは、サンプル音源を無料配布していますので、ぜひお試しください。

YMO結成40周年記念プロジェクトの一環で、Bob Ludwig氏によるリマスターが施されたYMOのファースト(Title5)は、当時彼らが行っていた革新的な試みがハイレゾ化で、より理解できるように聴こえます。

ピンク・フロイドの言わずと知れた名盤『狂気』(Title6)は、ハイレゾ化で没入感がさらに向上しています。リスニングルームの灯りを消して、少し大きめのボリュウムで聴いていると、本当に入り込んでしまいます。

オーディオファンの定番音質チェックディスクともいえる本作(Title7)は、多彩なフォーマットが入手でき、オーディオ的な音質の聴き比べも楽しめます。

スティングとのデュエット曲も収録されたメロディ・ガルドーの2022年作(Title8)は素敵なヴォーカルにやさしく包まれ、音楽の世界にどんどん引き込まれていきます。

チェロの音がリスナーの心に染み入る溝口肇の2014年作品(Title9)は、チェロの芯がしっかりと感じられ、丁度良い音の距離感が心地よいです。ご本人のコメントも興味をそそります。

「サウンド&レコーディング・マガジン」の誌面連動企画でスタジオライブをDSD一発録りで配信したのが本作(Title10)。魅惑の電子楽器オンド・マルトノなど、アナログ・シンセサイザーによる演奏です。収録風景などを紹介した記事もあり、とても参考になります。

執筆者プロフィール

加藤徹也(かとう てつや)
エソテリック株式会社
取締役 開発・企画本部長
1969年、東京生まれ。1991年、ティアック入社。プロ用オーディオ機器TASCAMブランドや民生用TEACブランド機器の開発。2000年からESOTERICブランド製品の開発に携わる。以降、数多くの製品を手掛ける。2015年、商品企画・開発担当の取締役就任。