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2026summer
ウィーン・ハイエンド2026見学記
日本オーディオ協会 事務局 衣斐良憲

2026年6月5日(金)と6日(土)にかけて、「HIGH END VIENNA 2026」を見学してきました。HIGH ENDは、これまで40年以上にわたりドイツ・ミュンヘンで開催されてきた世界最大級のオーディオショウですが、ミュンヘンの会場施設の改修計画などを背景に、2026年から開催地をオーストリア・ウィーンへ移し、「HIGH END VIENNA」として新たなスタートを切りました。
また、メイン会場とは別イベントである「VIENNA SOUND FEST 2026」と「hifideluxe」も同時に開催されていました。本稿では、これらを含めたウィーンの3つのオーディオイベントについて、OTOTENとの比較もしながら、一般来場者の視点でレポートします。
なお、以下の記事を参考にされますと、ミュンヘンとの違いなども分かって、より理解が深まることと思います。
- https://www.jas-audio.or.jp/journal_contents/journal202408_post19632
- https://www.jas-audio.or.jp/journal_contents/journal202510_post21067
序章
日本からウィーンへの移動は、北極圏上空を経由して早朝にヘルシンキへ到着し、その後乗り継ぎ便でウィーンへ向かいました。欧州を訪れるのは35年ぶりでもあり、世界最大級のオーディオショウと共に、「音楽の都」ウィーンの街への期待に胸が膨らみました。
ウィーン国際空港に到着してまず目に入ったのは、HIGH END VIENNAの大きな広告です。空港内の各所や地下鉄の構内でイベント告知が行われており、ウィーンでの初開催に対する期待の大きさを感じました。空港から市内へは、オーストリア連邦鉄道(ÖBB)の列車を利用して約30分でアクセスできます。市内交通は、地下鉄(U-Bahn)、トラム、バスが利用できる7日間乗車券を「Wien Mobil」アプリで事前購入しました。滞在中はこれらの公共交通機関を頻繁に利用しました。
公共交通機関が非常に発達しており、地下鉄とトラムを使いこなすことがウィーン滞在の助けとなりました。会場がある「Austria Center Vienna(ACV)」と有名なホールなどがある旧市街とは地下鉄で結ばれており、ホテルから会場も、それぞれ30分程度で移動できました。ドナウ川沿いのホテルに到着した後は「音楽の都ウィーン」の雰囲気を体感するため、楽友協会の黄金ホールを訪れ、ディ・シュロス カペレ室内管弦楽団によるコンサートを鑑賞しました。歴史あるホールの音響を聴いて、翌日のオーディオショウへの期待がますます高まりました。
B2Bデーの会場へ
会場の「Austria Center Vienna(ACV)」には開場時刻の30分前となる9時30分頃に到着しましたが、B2Bデー(業界関係者向け)の2日目ということもあり、この時点では来場者の列はそれほど長くありませんでしたが、開場時刻の10時が近づくにつれて来場者が増え、数百人規模の待機列ができていました。
受付では事前購入した電子チケット(e-ticket)を提示すると、入場証代わりとなる赤色のリストバンドが手首に装着されます。一度装着すると会期中は自由に入退場できる仕組みとなっており、受付スタッフの人数も十分に配置されていたため、入場に際して待たされることはありませんでした。
チケット料金
- 1-Day Visitor Ticket(土/日):20ユーロ
- 2-Day Trade Visitor Ticket(木/金):39ユーロ
- 4-Day Trade Visitor Ticket(木~日):59ユーロ
今回、B2Bデーと一般デー両方見学できる4-Day Trade Visitor Ticketを事前購入し、B2Bデーの2日目と一般公開日の初日に参加しました。初日は、まず会場全体の構造を把握するとともに、日本から出展している企業や既知の関係者の皆様へのご挨拶を兼ねて、会場内を巡りました。
会場となったAustria Center Viennaは、大規模な国際会議施設であり、メイン会場は5つのフロアで構成されています。さらに、Level 0およびLevel -2には「Hall X2~X5」と呼ばれるExtra Hall展示エリアも設けられていました。会場規模は、昨年まで使用されていたミュンヘンのMOCイベントセンターとほぼ同等とのことですが、実際に歩いてみると非常に広大で、すべての展示を見て回るだけでも相当な時間を要する規模でした。
メイン会場では大小さまざまな会議室が試聴室として活用されており、各ブランドがハイエンドオーディオシステムを設置してデモンストレーションを実施していました。来場者は自由に各部屋を訪れ、じっくりと試聴できるようになっています。一方、Extra Hallでは、メイン会場に入りきらないブランドの展示に加え、ヘッドホン・イヤホン関連製品、オーディオデバイス、アクセサリー類、レコードや関連グッズの物販コーナー、さらにはゲーミングオーディオの展示なども行われていました。全体としては、ハイエンドオーディオを中心に、その周辺領域まで含めて幅広く「音」を楽しめるイベントとして構成されており、来場者が一日かけても見てまわりきれないほどの規模でした。
出展企業については、欧州や北米のブランドが中心である一方、日本や中国をはじめとしたアジア企業も多数参加しており、まさに世界規模のオーディオショウであることを実感しました。ただし、展示内容については、近年アジア圏のオーディオショウで増加しているヘッドホン・イヤホンやポータブルオーディオ関連の展示よりも、スピーカーを中心としたハイエンドオーディオ機器が主役となっていました。どの展示スペースにも余裕があり、各試聴室では十分な空間を確保したうえでデモンストレーションが行われていました。
また、再生ソースとしてはネットワークプレーヤーやデジタル音源も多く利用されていましたが、それ以上にアナログレコードを再生しているブースが目立ちました。大型ターンテーブルを前面に配置し、アナログ再生を中心に音を聴かせる展示も数多く見られ、欧州市場におけるアナログ人気の高さを改めて実感しました。
運営面では、来場者向けのサービスも充実していました。会場内外には複数のキッチンカーが出店しており、サンドイッチやハンバーガーなどの軽食のほか、ビールなども販売されていました。休憩スペースも十分に確保されており、広大な会場を巡る来場者への配慮が感じられます。
さらに、プレスセンターや商談スペースも充実しており、展示会としての機能性の高さが印象的でした。会場内には理髪店まで設置されており、身だしなみを整えたり、リラクゼーションを目的としたスペースを設ける文化があるようで、その規模の大きさと来場者サービスの充実ぶりには驚かされました。
最初に、昨年のOTOTENにも出展いただいた台湾のGlass Acoustic Innovations(GAIT)のブースを訪問しました。新しいガラス製コーンを採用したアクティブスピーカーBSA-24のデモンストレーションを体験させていただき、日本でも近々Amazonで販売を開始する予定とのことで、嬉しそうに話されていました。OTOTEN2026のチラシを渡したところ、日本電気硝子ブースとして今年のOTOTENに出展いただけるとのことで、その後、実際にOTOTEN会場でご挨拶することもできました。
続いて、OTOTENにも出展される旭化成エレクトロニクス(AKM)ブースにも立ち寄りました。新開発のプレミアムオーディオ用オペアンプを搭載したアンプの比較試聴デモが行われており、DAC後段のアナログ出力回路に着目した技術コンセプトが紹介されていました。実際に試聴したところ、従来品と比較してより透明感のあるクリアなサウンドという印象を受けました。
一般公開日の様子
2日目は一般公開日となり、前日のB2Bデーとは会場の雰囲気が大きく変わりました。開場前から多くの来場者が列を作っており、体感ではB2Bデーの5倍程度の人出があったように感じました。さすが、4日間で2万人を超える来場者を集めるイベントだけあって、その規模の大きさを改めて実感しました。来場者は欧州各国からの参加者が中心でしたが、中国をはじめとするアジア圏からの来場者も多く見受けられました。世界最大級のオーディオショウということもあり、国際色豊かなイベントでした。オーディオ愛好家がじっくり試聴を楽しむイベントという印象が強く、会場全体も落ち着いた雰囲気に包まれていました。
来場者層については、B2Bデー、一般公開日ともに日本のオーディオショウと同様、中高年男性が中心であり、若年層の姿はそれほど多く見られませんでした。一方で、日本と比較すると夫婦で来場しているケースが目立ち、欧州の文化なのか、夫婦で展示会を楽しんでいる様子が印象的でした。
今年は節目の年を迎えたブランドも多く見られました。PMCの創業35周年、ARCAMの創業50周年、JBL、Klipsch、ONKYOの創業80周年、さらにELACやTANNOYの創業100周年など、それぞれの歴史を振り返る特別展示や記念モデルの紹介が行われており、長い歴史を持つオーディオブランドの存在感を強く感じました。
一般公開日には、各社が趣向を凝らした展示を行っており、その中でも特に印象に残った展示をいくつか紹介します。
まず、ドイツのMBLブースでは、同社独自の無指向性スピーカーによるデモンストレーションが行われていました。香港オーディオショウでも試聴したことがありますが、今回も広い試聴室を活かした展示となっており、スピーカーの存在を感じさせない自然な音場と、空間全体に広がる透明感のあるサウンドが非常に印象的でした。来場者も静かに聴き入っており、じっくりと試聴する姿が見られました。
Dynaudioブースでは、「Opus One – Step Into Sound」と題した体験型展示が行われていました。森の中をイメージした空間の中央には音響システムが配置され、その前面には木製パネルが音楽に合わせて動く演出が施されており、音だけでなく空間全体でブランドの世界観を表現していました。来場者の足を止める印象的な展示となっていました。
KlipschとONKYOの共同ブースでは、重低音がしっかりと響くクリアなサウンドが印象的でした。試聴したジャズ楽曲では、力強い低音とボーカル、管楽器がバランスよく再現されており、非常に心地よい音を楽しむことができました。
NAGAOKAブースも訪問し、ご挨拶しました。営業担当の方から現在のカートリッジ市場についてお話を伺ったところ、アナログレコード人気の高まりを背景に、日本メーカーとして、さらなる存在感を高めていきたいとのことでした。その意欲的な取り組みが印象に残りました。
一方、Extra Hallには、ヘッドホン・イヤホン関連製品やオーディオアクセサリー、レコード・CDなどの物販コーナーも設けられていました。ヘッドホンブースでは来場者が思い思いに立ち止まり、自分のペースでじっくりと試聴を楽しんでいる様子が印象的でした。また、中国のMOONDROPブースでは、アニメキャラクターを前面に打ち出した展示が行われており、若い世代の来場者がヘッドホンを試聴している姿が見られました。
物販コーナーではレコードやCDなどが販売されていましたが、日本のオーディオショウのように多くの人で賑わうというよりは、興味を持った来場者がゆっくりと商品を手に取る落ち着いた雰囲気でした。オーディオアクセサリーの展示も同様で、来場者はそれぞれ関心のあるブースで説明を聞きながら製品を見学していました。
香港オーディオショウでは、ヘッドホン・イヤホン関連ブースに多くの来場者が集まり、順番待ちが発生するほど賑わっていましたが、HIGH END VIENNAでは比較的ゆとりがあり、自分のペースで納得いくまで試聴できる環境が整っていると感じました。
また、ゲーミングオーディオの展示も行われており、ハイエンドオーディオを中心としながらも、幅広い音の楽しみ方を提案しようとする姿勢が感じられました。
今回のHIGH END VIENNAでは、カナダ出身のシンガーソングライターDominique Fils-Aimé 氏が初代アンバサダーに起用され、「The Power of Music」という2026年のテーマを体現する存在として、オープニング記者会見への登壇に加え、一般公開日の初日にライブイベントが開催されました。ライブを見ることはできませんでしたが、後日、各種レポートなどを確認したところ、ウィーン開催を象徴する新しい試みとして受け入れられている印象を受けました。
単なるオーディオ機器の試聴や商談を主目的とした展示会ではなく、「音楽文化を発信するイベント」として新たな方向性を示したように感じました。HIGH ENDも今後は、音楽・文化・技術を融合させたイベントを目指す姿勢をより明確に打ち出しているように思われます。OTOTENは、従来からステージイベントや体験型コンテンツなどを実施しており、このような「音楽を体験する場」を、OTOTENならではの特色としてさらに磨いていく価値があると感じました。
VIENNA SOUND FEST 2026
「VIENNA SOUND FEST 2026」は、Austria Center Vienna(ACV)のすぐ近くにあるTECH GATE VIENNAを会場として開催されていました。Ground Floor、1st Floor、7th Floorの各フロアを利用し、ESOTERIC・TEACをはじめ、TANNOY、Dream Audio、PILIUM、Audio Nostrumなどが出展していました。
HIGH END VIENNAのサテライトイベントという位置付けですが、会場には公式パンフレットなどの用意がされておらず、受付で手書きの展示案内を見せてもらうという状況でした。一方で、その分ゆったりと各ブースを見学できました。
JASジャーナル編集委員長である吉田さんからこの会場を教えてもらったこともあり、ESOTERIC・TEACブースを訪ねてご挨拶し、見学させていただきました。
ESOTERIC・TEACブースはジャズ喫茶をイメージした空間となっており、ドリンクを頂きながら試聴させていただきました。一般的な展示会のように短時間で次々と来場者が入れ替わるのではなく、来場者がゆったりと腰を据えて音楽を楽しめる演出が印象的でした。とはいえ、欧州各国からの来場者が次々と訪れており、落ち着いた雰囲気の中にも、賑わいが感じられました。
また、TANNOYの創業100周年記念展示では、記念モデルを中心とした展示が行われていました。大型スピーカーから奏でられる豊かで深みのあるサウンドを、来場者が椅子に座ってじっくりと楽しむスタイルとなっており、メイン会場とは異なり、ゆったりとした試聴環境が印象に残りました。
HIGH END VIENNAが「世界最大級の総合オーディオショウ」であるのに対し、VIENNA SOUND FESTはブランドごとの世界観をゆっくり体験できる、落ち着いた雰囲気のイベントという印象でした。
hifideluxe
「hifideluxe」は、Austria Center Vienna(ACV)近くのARCOTEL Kaiserwasser Hotelを会場として開催されていました。ホテルの客室やパーティースペースを利用した展示会で、会場入口で受付を済ませるとフロアマップが1枚配布されるだけという、こちらも非常にシンプルな運営でした。
展示はGround Floorに約10社、5階に約5社が出展しており、欧米のハイエンドオーディオメーカーを中心とした構成でした。日本ではあまり目にする機会の少ないブランドが多く、それぞれの客室を利用して試聴デモが行われていました。
印象に残ったブースの一つが、フランスのJMF Audioです。アナログレコードを中心としたデモンストレーションが行われており、アナログならではの温かみのあるサウンドをゆったりと楽しむことができました。また、スイスのFM Acousticsでは、来場者のリクエストに応じてクラシックレコードを再生しており、高級アンプならではの繊細で品位のある音を静かな雰囲気で堪能することができました。
5階のAudio Note UKブースでは、バイオリンを中心とした楽曲が再生されていました。弦楽器の伸びやかな響きや空気感まで丁寧に表現されており、同社らしい自然で透明感のある音づくりが印象的でした。Rockna Audioブースではロックを中心としたデモンストレーションが行われ、同じハイエンドオーディオであってもクラシックやジャズだけではなく、さまざまなジャンルの音楽で機器の個性をアピールしていることがうかがえました。さらに、BAYZ Audioのブースでは、Stereo Sound Grand Prix 2024受賞を紹介する展示が行われており、日本市場を意識したPRも見受けられました。
会場全体を通して感じたのは、来場者が非常に少なく、どのブースでも落ち着いて試聴できることでした。特に5階はホテルの客室の一部だけを利用した展示となっており、オーディオ愛好家のリスニングルームを訪問しているような雰囲気でした。HIGH END VIENNAのような大規模展示会とは異なり、時間を気にすることなく一つひとつのシステムをじっくり聴き比べられることが、このイベントならではの魅力であると感じました。
HIGH END VIENNAから見えたこと
開催地であるウィーンについては、改めてオーディオショウとの親和性の高さを感じました。世界有数の音楽文化を持つ都市であり、国際空港や公共交通機関も充実していることから、世界各国の出展社や来場者を集める開催地として非常に適しているように思いました。実際に会場内では英語を中心にさまざまな言語が飛び交い、世界中のオーディオファンや業界関係者が集う国際イベントとしての規模の大きさを実感しました。
展示内容については、ハイエンドオーディオに特化した専門性の高さが印象的でした。各ブランドは限られた製品をじっくりと試聴してもらうことを重視しており、試聴室の広さや座席配置にも配慮が感じられました。また、アナログレコードによる試聴や大型スピーカーによるデモが数多く行われており、「良い音をじっくり聴く」というオーディオ本来の楽しみ方を大切にしている展示会であることを改めて感じました。また、今回のHIGH END VIENNAでは、初めてアンバサダー制度が導入され、ライブイベントも開催されるなど、単なる機器展示会から「音楽文化を発信するイベント」へと発展しようとする姿勢が感じられました。オーディオ機器だけでなく、その先にある音楽体験を来場者へ届けようとする試みは、今後の展示会の方向性として興味深く感じました。
OTOTENは、ホームシアター、カーオーディオ、ヘッドホン・イヤホン、録音機材・音響技術など、ハイエンドオーディオ以外の分野も幅広く紹介する総合イベントであり、さらに学生向けセミナーや最新技術セミナー、体験型企画など、多様な来場者が「音」を楽しめる場を提供している点が大きな特徴です。今回の視察を通じて、このような総合性はOTOTENならではの強みであると改めて認識しました。
HIGH END VIENNAから学ぶべき点も数多くありました。BtoB機能の充実、ゆとりある試聴環境、十分な休憩スペースやキッチンカーの設置、そして音楽ライブなど来場者の滞在価値を高めるコンテンツづくりは、今後のOTOTENに取り入れることで、来場者満足度をさらに向上させられる要素だと感じました。
今回の視察を通じて、HIGH END VIENNAには「ハイエンドオーディオの専門性」と「音楽文化との融合」という魅力があることと、一方で、OTOTENには「幅広い音の楽しみ方を提案する総合イベント」という魅力があること、それぞれの特徴を改めて実感できました。今後も海外の展示会から学ぶべき点を積極的にOTOTENへ取り入れ、オーディオ文化のさらなる発展に貢献していきたいと思います。
執筆者プロフィール

- 衣斐良憲(えび よしのり)
1968年、東京都生まれ
1992年~2025年、ソニーで民生ビデオ機器のソフトウェア設計に従事
2025年3月、ソニー退社
2025年4月、日本オーディオ協会へ入職























































