2026summer

OTOTEN2026開催報告
― 新たな挑戦と協会創立75周年に向けて ―

日本オーディオ協会 事務局 八木真人


3日開催となったOTOTEN2026に79社が集結

はじめに

6月19日から21日までの3日間、東京国際フォーラムガラス棟・D棟において、「OTOTEN2026」を開催いたしました。OTOTEN2026の開催にあたり、ご出展いただいた企業・団体の皆様、ご協力いただいた関係者の皆様、そしてご来場いただいた皆様に、心より御礼申し上げます。

近年、OTOTENは出展各社ならびに関係者の皆様のご理解とご支援により、着実に発展を続け、多くの方々にご来場いただけるイベントへと成長してまいりました。日本のオーディオ文化を次世代へつないでいくためには、新たな来場者との接点づくりや、より質の高い体験価値の提供が重要であると考えています。こうした考えのもと、OTOTEN2026では3日間開催への拡大、「プレミアムデー」の新設、記者発表会の開催、Wアンバサダーの起用など、数々の新たな取り組みに挑戦してまいりました。

また、「初めての方でも気軽にイイ音を楽しめるイベント」を目指し、会場演出やイベント企画など、来場者の皆様により楽しんでいただくための様々な施策を実施しました。会期中は悪天候や大型スポーツイベントと日程が重なる条件ではありましたが、多くの皆様にご来場いただき、3日間で7,744名をお迎えすることができました。

OTOTEN2026で取り組んだ新たな挑戦とその成果を報告いたします。

1. 新たなチャレンジ 「記者発表会の開催」

当協会が発信する報道発表のほとんどは、オーディオ系メディアの皆様のご協力を経て、掲載いただいています。一方で、オーディオに馴染みのない方や若い世代にも、オーディオの魅力やOTOTENの楽しさを広く伝えていくためには、より幅広いメディアを通じてOTOTENを知っていただく機会を増やす必要があると考えました。こうした背景から、OTOTENでは初の試みとなる事前の記者発表会を4月13日に開催しました。当日は20社を超える報道関係者に加え、30名を超えるインフルエンサーの皆様にご参加いただきました。

発表会では、小川会長より、「情報の処理はAIに任せられても、感動の領域は譲れない!オーディオは単なる装置ではなく、感動を届けるものである。そうした体験ができる場がOTOTENである」と印象的なメッセージで、OTOTENの開催意義が述べられました。当日は、OTOTEN2026のアンバサダーの1人である安野希世乃さんにもご登壇いただき、小川会長とトークセッションを行っていただきました。声優や歌手として活動されている安野さんの音楽やオーディオとの向き合い方の話は、とても興味深く、出席されたメディアの方々も熱心に聞いておられました。

また、OTOTEN2026へ出展される10社の出展社にもご参加いただき、各社の注目商品や出展内容を紹介してもらい、OTOTENへの期待を高めていただきました。結果、この発表会の様子は、オーディオ専門媒体に加え、ガジェット系・アニメ・エンターテインメント系など幅広いメディアに取り上げられました。


記者発表会の様子

2. 新たなチャレンジ 「プレミアムデー」

OTOTENは、近年、多くの方にご来場いただいき、「とても活気があり、華やかなイベントだ」と高い評価を頂いています。一方で、「混んでいて、ゆっくりとオーディオを試聴できない」、「人が多すぎて取材ができない」という声も寄せられていました。こうした課題を解決するため、2026年は、会期を2日から3日に拡大することにしました。しかし、ただ会期を延ばすだけでは、どうしても初日に人が集中してしまいます。そこで新たな取り組みとして、会期初日の6月19日(金)を有料化し、また人数を限定することで、いち早く展示内容に触れることができるメリットがあり、ゆっくりと体験もできる「プレミアムデー」を設けました。

プレミアムデーは、報道関係者に加え、販売店・流通関係者などの出展社からの招待客とともに、有料チケットを購入いただいた一般来場者にもご参加いただく特別公開日として実施しました。「最新製品をじっくり試聴できること」、「開発者や説明員とゆっくり交流できること」、「報道関係者が十分な取材・撮影時間を確保できること」をコンセプトに、新しいOTOTENの価値創出を目指しました。各出展社でもプレミアムデーに合わせて新製品発表や報道向け説明会などが数多く実施され、一般公開日とは一味違う1日となっていました。

更に、プレミアムデーならではの企画として、「麻倉怜士が語る『魅惑のアナログレコード』 ~45回転LP『ボヌール』の制作秘話と情家みえライブ~」、「ピエール中野×土田嘉範 ドラムサウンドクリニック」を開催、音楽とオーディオの魅力をより深く体験いただけるプログラムを実施しました。

3. 新たなチャレンジ 「新しいオーディオファンを育てる」

3-1. Wアンバサダーによる新たなファン創出

2024年からアンバサダーを務めていただいている人気VTuber AZKiさんとのコラボレーション効果もあり、「好きなアーティストの楽曲をイイ音で聴く」というオーディオ体験を提案し、多くの若い世代にOTOTENへ来場いただけるようになりました。「開拓者(AZKiさんファンの呼称)」の皆さんにも、徐々にオーディオに関心を持っていただけるようになり、この実績から、今年もAZKiさんにアンバサダーになってもらおうということは、早い段階から内定しましたが、さらに、多くの人に推しの曲をイイ音で楽しんでもらうためにはどうするべきか?という課題に対応するための検討を重ねてきました。

開拓者の皆さんも納得する、昨年以上にOTOTENを楽しんでもらう、そのためにはどうすべきかを徹底的に協会内で議論しました。そこでたどり着いた答えが、VTuberと同様に、声を大事にしてる声優や歌手の方に、一緒にメッセージを発信してもらってはどうか?でした。そこで、AZKiさん自身もファンであり、アニメ『マクロスΔ』のカナメ・バッカニア役、戦術音楽ユニット「ワルキューレ」のリーダー、安野希世乃さんにアンバサダーを依頼することになりました。VTuberと声優・アーティストという、それぞれ異なるファン層へメッセージを届けることで、推しの音楽をイイ音で楽しむというオーディオの魅力を、より幅広い世代へ発信することを目指しました。

3-2. 会期前からOTOTENを楽しむ取り組み

OTOTENでは、開催当日だけでなく、開催前からワクワクしながらイベントを迎える楽しさを演出することも重要なテーマとして取り組んでいます。Xを基軸としたメッセージ発信、アンバサダーの二人からOTOTENを紹介いただく特設サイトの公開やプレゼント企画を用意し、開拓者や「安野家。(安野さんファンの呼称)」の皆さんに期待を高めていただく試みを行いました。さらに、二人によるライブ配信を5月30日に実施いたしました。

今回のライブ配信は、「イイ音は楽しい」というメッセージを、音のこだわりを持っている二人ならでの形で伝えて欲しいと依頼し、VTuberファン、声優ファンに親しまれているASMR企画を取り入れました。ライブ配信当日は、最初こそ二人とも少々緊張していましたが、お互いに「あずきち」「やすきち」と呼び合うようになり、親友のような自然な掛け合いとなりました。

OTOTENの紹介もアンバサダーとして、OTOTENの魅力を十分に発信していただきました。ライブ配信は同時接続5,000超、アーカイブ配信は約6万回再生となり、大きな反響を頂きました。

AZKiさん、安野希世乃さんによるOTOTEN2026コラボ配信

また、安野さんには、21日(日)にOTOTEN会場でトークショーもしていただきました。200人以上のファンが駆け付け、会場は満席となり、立ち見が出るほどの盛況となりました。トークショーではマイクの使い方、声の出し方など、声優ならではの音へのこだわりやOTOTENの見どころを話していただき、会場は安野さんのトークに終始笑顔に包まれました。また、会場に設置した総額7,500万円の高級オーディオ機器で安野さんの楽曲を試聴、トークショーはさらに大きな盛り上がりをみせました。


安野さんのトークショーは満席、立ち見が出るほどの人気

3-3. 会場全体で楽しめる仕掛けづくり

今年も、特設ブースを設け、トライオードの真空管アンプ、フォステクスのモニタースピーカー、クリプトンのブックシェルフスピーカーを用いて二人の楽曲を楽しんでもらいました。多くの若い方々が二人の楽曲を試聴しに特設ブースを訪れましたが、今年は昨年とは異なる傾向が見られました。昨年までは試聴のあと、ブース内の写真撮影やサインボードの書き込みに夢中になる方が多かったのですが、今年はオーディオ機器の質問や写真撮影を行うなど、オーディオ機器に関心を寄せる方が非常に多かったのが印象的でした。これは、お二人が継続してオーディオの楽しさを発信してくださった成果の一つであると感じています。特設ブースには、のべ1,500人以上の方が訪れました。

また、希望される出展社には、お二人の楽曲を試聴いただけるように準備した他、お二人に特別収録していただいた「オーディオ豆知識」のボイスを聴くことができるQRコードカードを設置してもらいました。来場者が宝探しのように会場を巡りながら、オーディオについて学べる企画として、多くの方に楽しんでいただきました。


今年も多くの方にメッセージを書いていただきました

3-4. アンバサダー自身もOTOTENを楽しむ

AZKiさん、安野希世乃さんのお二人には、イベント出演だけでなく、会場内のさまざまなブースを見学いただきました。本格的なオーディオ機器の試聴や最新技術に触れながら、OTOTENを楽しんでいただく様子は、SNSを通じて多くのファンに発信されました。(安野希世乃 Officilal XAZKi Channel 【Forza Horizon 6】AZKiと深夜のドライブ #4【ホロライブ / AZKi】)アンバサダー自身がOTOTENを楽しむ姿を見せてくださったことも、来場者がオーディオをより身近に感じるきっかけになったものと考えています。なお、お二人ともスピーカー技術を応用した、加振器を用いて味わいを良くした日本酒の試飲コーナーが気に入られたようで、なかなかその場を離れようとされませんでした(笑)。

4. 新たなチャレンジ 「OTOTENを音のアミューズメントパークに!」

「初めての方でも気軽にイイ音を楽しんでもらう空間づくり」は、OTOTENの最重要テーマの1つです。個室のドアの開放や廊下の装飾、スタンプラリーを楽しみながら会場を周遊してもらうなど、来場された方がワクワクしながら過ごしていただく取り組みを続けています。今年も、出展社の皆様に協力いただき、ブース内だけでなく廊下でも楽しめる工夫をしていただきましたが、各社の趣向が昨年以上にパワーアップし、会場全体がさらに楽しい雰囲気となりました。

さらに、以前から来場された皆様より寄せられていた「休憩できる場所が欲しい」「コーヒーや食事を楽しみながら一日ゆっくり過ごしたい」といったご要望を踏まえ、今年は新たに休憩スペースとキッチンカーを導入しました。来場者が時間を気にせず、オーディオを楽しみながらゆっくりと滞在できる環境を整えたことで、イベント全体の満足度向上にもつながったものと考えています。

OTOTENは単なる展示会ではなく、「音楽」「オーディオ」「人との交流」「新しい発見」が一体となった体験型イベントであり、家族連れでも一日中楽しめる「音のアミューズメントパーク」を目指し、さらなる改善に取り組んでまいります。

5. 新たなチャレンジ 「オーディオ文化の未来を築いていくためのイベント・セミナー」

5-1. オーディオの未来を考える

ストリーミングミュージックの普及やレコード人気の再燃など、オーディオを取り巻く環境は大きく変化しています。一方でオーディオファンの高齢化など、取り組むべき課題は決して少なくありません。業界の未来を考えていくことはとても重要と捉え、OTOTENで「オーディオ業界をどう盛り上げていくか?」というテーマに正面から取り組みました。オーディオ評論家の土方久明氏がコーディネーターとなって、ピュアオーディオ、ポータブルオーディオの販売店の代表者を招き、「頼む、みんなの力を貸してくれ!オーディオを盛り上げるためのディスカッション2026」を行いました。試聴音源、世代間の壁など多角的に現状課題について、和やかながらも真剣なディスカッションが行われ、イベント参加者からも熱い意見が多く出る貴重な機会となりました。


左から、土方久明さん(オーディオ評論家)、島健悟さん(ダイナミックオーディオ)、
坂本哲平さん(オーディオユニオン)、岡田卓也さん(e☆イヤホン)、石曽根誠さん(フジヤエービック)

5-2. 制作者、アーティストと共にオーディオ文化を築く

オーディオを楽しむためにはコンテンツとハードの両輪が大切であることは言うまでもありません。今年のOTOTENのイベント、セミナーの特徴として、アーティストやレコーディングエンジニアというコンテンツに深くかかわる方の登壇が多数ありました。学生向けセミナーには、第31回日本プロ音楽録音賞で「ニュー・プロミネント賞」を受賞された、レコーディングエンジニアのNNZN(ナンゼン)さんをお迎えし、VTuberやネットシーンを賑わせる“あのサウンド”に、どのようにして辿り着いたのかを語っていただきました。また、凛として時雨のドラマーであるピエール中野さんには、前述のプレミアムデーと21日(日)の2日ご登壇いただき、音に対するこだわりをしっかりと語っていただきました。

6. カテゴリを超えた出展社の数々

OTOTENは、オーディオイベントであると共に、多様な「音」の可能性の提案を行う場でもあります。このコンセプトは1952年(昭和27年)に、第1回全日本オーディオフェアにおいてステレオ再生実験を行って以降、脈々と受け継がれています。今年も多様な音の体験を提案する出展社が揃いました。特徴的な出展社をいくつかご紹介いたします。

6-1. 進む出展社のグローバル化

近年、OTOTENの名前は東アジアを中心に知れ渡り始めています。中国電子音響協会の陳立新事務総長がOTOTENに関心を持たれて、表敬訪問されました。日中のオーディオ文化交流と業界発展のために協力していきましょうとのご挨拶があり、我々からはOTOTENに出展したい中国企業の紹介をお願いしました。


中国電子音響協会 陳立新事務総長(右)

また今年は、海外のオーディオブランドの出展が、昨年以上に増え、各社とも新製品を中心とした、魅力的な展示、デモを行ってい、常に人でにぎわっていました。

6-2. 広がる技術提案出展企業

OTOTENはオーディオ製品以外に、技術やソリューションの提案を行う企業にも多数出展いただいています。旭化成エレクトロニクスでは最新のオペアンプの国内初試聴デモが行われたほか、日本電気硝子のブースでは台湾企業GAITと共同開発したガラス振動板を採用したイヤホンやBluetoothスピーカーの試聴を行い、多くの人の注目を集めていました。

6-3. コンテンツとのコラボレーション、ライフスタイルの提案

今年は、出展社がかけるデモ曲でも変化が見られました。ヤマハミュージックジャパンでは人気アニメ「上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花」とのコラボレーション試聴会を行い、大勢の方が親しみのある楽曲を通じて、本格的なオーディオを楽しまれました。ディーアンドエムホールディングスでは「総額3,000万円のシステムで聴くAZKi&安野ソング」と称した試聴イベントを実施し、ファンへ感動を伝えました。音楽のジャンルやコンテンツを入口に、オーディオへ興味を持っていただく取り組みは、ますます重要になっていくものと考えています。

また、電子情報技術産業協会(JEITA)のブースでは加盟企業のオーディオ機器を初心者向けにわかりやすく説明、デモを行っていて、賑わいをみせていました。他にも防音ルームの実体験ができる「旅する防音室」を地上広場でデモを行ったヤマハ、ALPHARD MODELLISTA Conceptで人気を博したトヨタカスタマイジング&ディベロップメントをはじめとしたカーオーディオエリアなど、魅力あふれる出展社の数々は終始賑わいをみせていました。

7.2027年、日本オーディオ協会創立75周年に向けて

2027年、日本オーディオ協会は創立75周年という大きな節目を迎えます。OTOTEN2026では、ここまで述べてきた様々な新しい取り組みに挑戦してきました。来場者数は7,744人と前年を下回る結果となりましたが、OTOTENにまた訪れてくれたリピーターが若い世代を中心に増加しています。また、滞在時間も昨年より長くなりました。若い世代の来場を増やすというミッションから一歩前進して、OTOTENを楽しむ若者が定着してきたということの表れではないかと考えます。「今年も良い音を全身で浴びれて幸せだった」「楽しすぎて音響沼にハマるのが怖い(笑)」といった感想を多く頂戴しています。このような反応は、これまで取り組んできた成果であると考えています。

創立75周年を迎える2027年は、日本オーディオ協会にとって新たなスタートの年にすべく、オーディオ文化のさらなる発展に向けて挑戦を続けてまいります。

今後とも、日本オーディオ協会ならびにOTOTENへのご支援、ご協力を賜りますようお願い申し上げます。