2022summer

「OTOTEN2022」キーノートスピーチ
講演:麻倉怜士
〜OTOTEN2022で体験できる3Dオーディオの魅力〜

専務理事 末永 信一

概要

今年2022年は日本オーディオ協会が創立70周年を迎える年となりました。70年前の日本には、まだステレオという概念がなく、OTOTENの前身である第一回の「全日本オーディオフェア」で、ラジオを2台並べて、来場者がステレオ体験をするということが行われました。これを1Dから2Dへの進化だとすると、今まさに時代は2Dから3Dへと進化を遂げようとしています。「OTOTEN2022」では、3Dのフォーマットがほぼすべて出揃い、来場者はそれぞれの体験ができる場となりました。創立70周年を記念して、AV評論家の麻倉怜士氏にキーノートスピーチをお願いし、「OTOTEN2022で体験できる3Dオーディオの魅力」について語っていただきました。

ABSTRACT

Japan Audio Society celebrated its 70th anniversary in this year, 2022. To celebrate our 70th anniversary, we asked AV critic Reiji Asakura to give a keynote speech on the appeal of 3D audio that can be experienced at OTOTEN2022.

この記事について

OTOTEN2022では、コロナウィルス感染拡大を予防する目的の一環として、会場への来場ならびに協会が主催するセミナーの受付は事前登録制とさせていただきました。特にこのキーノートスピーチの人気は高く、登録受付開始から2時間ほどで満席となってしまいました。

そのため、ライブ配信についても追加で告知させていただいたのですが、どんな内容だったかを知りたいとのお問い合わせも多いため、麻倉怜士氏に許可をいただき、抜粋して、記事化させていただきます。

冒頭に、私、末永より、協会創立70周年を記念したこのキーノートスピーチの意味合いをご紹介させていただき、小川会長からたくさんの来場者に対するお礼の挨拶があり、会長から麻倉怜士氏が紹介されて、たくさんの拍手で迎えられました。

<講師 麻倉怜士氏 登壇>―――――以下、キーノートスピーチより抜粋

ではですね、「OTOTEN2022で体験できる3Dオーディオの魅力」というタイトルでお話したいと思います。

自画自賛じゃないんですが、このデザイン、中々素晴らしいでしょ?
この表紙は実は、先ほど前説をやっていただいた末永さんが作ってくれたんですよ。凄いでしょ。で、さっきちょっと秘密を聞いたんですけど、まず、右のアイコンは、これはOTOTEN2022の共通イメージなんですかね。それで、左の2本の柱がポイントなんですよ。何かというとですね、70度の角度。分かる?70周年ということでですね、70度の角度で表わしているんですねぇ、そこまで考えてらっしゃるということですね!

さあ、今日はですね、
OTOTENで体験できる3Dオーディオの話ということでですね。どういう話をするかというと、こういう話をしようという訳です。

音楽鑑賞メディアとしてのイマーシブ・オーディオの歴史

イマーシブ・オーディオって、どういう風な歴史を辿ってるの?という所からお話します。音楽鑑賞という所に焦点を絞って考えると、これは2010年のAES東京大会でAuro-3Dのヴィルフリート・ヴァン・ベーレン会長さんが、「イマーシブ」という言葉を使って垂直方向に伸びるオーディオっていうのがいかに素晴らしいかということをおっしゃったんですね。

この時に使われたのがこのモノ、ステレオ、サラウンド、イマーシブということで、エジソンはモノを作ったと。30年代にこれはRCAをはじめとしてステレオを作ったと。それから80年代に、これは映画産業からサラウンドというのが来たと。それから2010年から「イマーシブ・サウンド」という言い方をされて、言葉を作っただけではなくて概念を作るんですね。で、彼のやったことは、まずスピーカー配置はどういうことをしましょうかということでですね。「5.1chをベースにフロントL/Rにハイトを加えたらとても良い結果が得られました。サラウンドにもハイトを加えると音場がさらに濃密になりました」と。ギャラクシースタジオを使って「3年間ぐらいかけて300通りの配置を考えた」ということです。

2チャンネル/5.1チャンネル/イマーシブ・オーディオではどう聞こえが違うか

じゃあ実際問題2chと5.1chとイマーシブ・オーディオではどう聴こえ方が違うんですかということを、WOWOWの辰巳スタジオの中に、立派なイマーシブ試聴室があるのですが、ここで実験をしてみました。

これは私のインプレッションなんですけども、2chは元々360度に展開しているものを全て凝縮して2chに入れていると、本来はコンサートホールっていうのは360度に展開する所を、これを2chに凝縮しているという感じ。それが、5.1chになると解放されるんですね。前に凝縮してたものがパッとこう広がっていくという所があって、これも凄くいいなあという感じです。さらに、5.1chからイマーシブに変わると、より解放されるというかですね、空間性が解放されるという所が一番大きくて、これが一番我々の日常的に聴いているリスニングなんですね。だからここで違うのは、脳の使い方というのが、2chの場合かなりこの凝縮された中から、頭の中でこう引っ張りだして「この音は上から聞こえてくるはず」とか「奥から来るはず」みたいな所を考えるんですけども、5.1chになるとそれが解放されて、さらにイマーシブになると物凄く解放されるという、脳が自然に認識するという所が大きいのではないかと思います。

オーディオ・メディアとしてのイマーシブの利点

では次はオーディオ・メディアとして、どういう利点があるかということを考えてみますと、最も素晴らしいのは、臨場感と音像が二択ではないということです。イマーシブの場合は、響きの豊かさと音像の明瞭さが両立できるんですが、これはどういったことかというと、ミキシングにおいて基本の5.1chにリアルの音場を張り付けて、ハイトにこのアンビエントを張り付けるという、スピーカーの機能を分けることが出来るんですよね。

ところが2chだと分けられないんですよ。2つしかないので、アンビエントも、この音像のアキュレートな情報も、すべてを出さなきゃいけないということになります。ステレオ再生ではどちらかに重点が置かれるが、イマーシブでは音像の明確さを出しながら響きの豊潤さも出せる。会場の雰囲気が、聴きながら明瞭な音が表現できると、これがやっぱり凄く大きなポイントではないかと思うのですね。

イマーシブ・フォーマット

という訳で、ここまでですね、基本概念をおさらいしましたので、じゃあ各フォーマットの最新状況がどうなっているかということをお話ししていきましょう。

Dolby Atmos

ますドルビーアトモス。ドルビーアトモスは、最初は映画で始まったんですけど、今ミュージックで大変注目されています。ドルビーアトモスのエンコードされたファイルがApple MusicとAmazon Musicで物凄い数が流れているんですね。

私が取材した話ですけれども、ユニバーサルミュージックがたまたま目の前にあったドルビーアトモスツールを使って、これ5、6年前の話で、このツールは映画にしか使わないんですけど、エルトン・ジョンの『ロケットマン』って楽曲が目の前にあって、トラックファイルが48ぐらいある訳ですよね。それを最終的に2chにまとめてCDに出すわけですが、元々のトラックが48ぐらいある訳ですから。じゃあ例えばピアノを上に持ってこようとかですね、ボーカルは前でコーラスは後ろだみたいなことを考えてやった所、もう皆さん大変感動してですね、これで次のビジネスできるんじゃない?みたいなことがあったとのことです。

今回はドルビーさんの部屋はありませんので、ドルビーアトモスは、ヤマハさんやデノンさんのブースで体験できると思います。

DTS:X/IMAX Enhanced

では、次DTS:X。まあドルビーといえば、片やDTSというわけで、DTS:Xがイマーシブ・フォーマットで、オブジェクト音声なんですが、音がちょっと違っていて、ドルビーはキリッとした感じで、DTSはなんかグーンという押し出すような剛性感の高い音が得られます。

今、DTSは30周年ということで頑張ってらっしゃるのですが、映画作品が360タイトル以上、ブルーレイで200タイトル以上ということです。で、実はですね、DTS:Xだけで展開するというよりも、最近はIMAX Enhancedという形で、IMAXの家庭用プログラムの中の音声として展開してることが多いんです。ブース的には、DTSはG507ですね。私も明日トークショーをやることになっています。

Auro-3D

3番目はAuro-3Dです。正にイマーシブ時代を切り開いたヴィルフリート・ヴァン・ベーレンさんですね。「イマージブサウンドで最も重要なこと。それは自然さです。人工的な味付けや協調感はあってはダメです。まるで音楽がその場で鳴って、自然な響きが空間から出て来るような体験こそが貴重なんです」というわけで、先ほど言った、スピーカーをどこにやるかというのを300通りやったというのが、このヴァン・ベーレンさんですね。

で、ごく最近の大ヒットはですね、ボブ・ジェームズの『FEEL LIKE MAKING LOVE!』で、これは全てのフォーマットで出ます。アナログレコード、SACD、それからMQA-CDでも出るし、UHD BDとBDも出る。

22.2チャンネル

次はNHKの22.2chですね。これは元祖イマーシブみたいなものなんですけども。上に天井面、ハイトが9、ミドルが10、ボトムが3で22に、サブウーファーが2という訳です。これはですねB1フロアで聴けますので是非体験してください。

NHKのところで是非見て欲しいのはですね、パナソニックのDMR-ZR1という最新型の4K BDレコーダーをここで体験できまして、何かというと、4K放送の中で22.2chで来る音源を、ハードディスクに録って、ドルビーアトモスに変換して、再生すると、音場の濃密さとか音像の位置っていうのが、もう凄く正確な訳です。家で22.2chを聴ける人は絶対いないですよ。それを家のAVアンプと、あとはそのサラウンドのスピーカー配置に入れると、あら不思議というわけで、ドルビーやDTSしか聴けなかったものが、NHKが精魂込めてお作りになった素晴らしい音場の作品がバンバンバンバン聴けるという所がありますので、これはやはり8K/4Kの普及にもなるし、やっぱり音の側でイマーシブというものが、もっともっと日常的に入ってくるという一つの非常に重要なものになると思います。それからその隣ではアストロデザインのチェアスピーカーなどが聴けます。

360 Reality Audio

最後にソニーの360。これ「さんびゃくろくじゅう」って言っちゃいけないんですよ。「さんろくまるリアリティオーディオ」ってわけで、これはMPEG-Hというフォーマットを使いまして、流れとしてはレコーディングして、レコーディングっていうのはじつは凄く少なくてですね、ほとんど旧譜寄り。今10,000タイトルぐらいが出てるらしいんですけれども、それをオーサリングしてエンコードして、このフォーマットに入れて、それを基本的には配信して、スマホで聴くと。

最近の話題でですね、2022年4月に今年のグラミー賞でベスト・イマーシブ・オーディオ・アルバム賞をアリシア・キーズが取りましたというのが一つ大きなあれですね。それから日本でもYOASOBIとか、スペースシャワーとか、こういう所でやってます。基本的にはソニーのアーティストですね。ソニーは、G610です。

WOWOWの挑戦

で、最後のお話がWOWOWの挑戦でして、WOWOWといえば入交さんがですね、WOWOWの新しい展開がイマージブサラウンドであるとおっしゃっています。それをどのように展開するかというところで、様々な実験をしてるんですね。2020年10月にハクジュホールで、名倉さんのマリンバコンサート、これは2chとMQAとHPLで配信しました。同じく10月に、今度は仲野さんのピアノデュオをですね、Auro-3Dで配信しました。今年に入っては落語をですね,MQAとかAuro-3Dで配信しました。

WOWOWは、このOTOTENではハイレゾ3Dオーディオの未来としてG508号室で、オメガプレーヤーの体験もできます。

というわけで、大体時間が来ましたので、私のお話はこの辺にします。
それで、最後はこうなります。

――――― 大きな拍手と共に、キーノートスピーチが終了しました。