2022summer

「OTOTEN2022」開催報告

OTOTEN事務局 八木 真人

概要

去る6/11、12に東京・有楽町にあります東京国際フォーラムのガラス棟にて、「OTOTEN2022」を開催いたしましたので、ここにご報告させていただきます。

2020年、2021年と緊急事態宣言下によりOTOTENの開催を中止せざるを得なくなってしまったため、今回は3年ぶりの開催となりました。久しぶりのリアルイベントということから、たくさんのオーディオファンの皆様方にご来場をいただきました。まずは、この開催に際し、出展企業の皆様、関係者の皆様、そして来場された皆様に深く感謝申し上げる次第です。ありがとうごいました。

ABSTRACT

This is the report on “OTOTEN2022”, which was held on June 11 and 12 at the glass tower of the Tokyo International Forum in Yurakucho, Tokyo.

1. 「OTOTEN2022」について

「OTOTEN2022」は出展社数55社、一般来場者数は、2日トータルで3,395名でした。会場全体の雰囲気や今回準備を進めてまいりましたアプローチの数々について、報告させていただくと共に、来場者の分析についても記載したいと思います。加えて、見えてきた課題から、来年度の開催に向けた改善点についても考察したいと思います。なお、70周年記念展示コーナーキーノートスピーチライブ配信については、別記事にてご紹介させていただきます。


OTOTEN2022フロアマップ

現在、オーディオの市場として、3Dオーディオ、あるいはイマーシブオーディオと呼ばれる分野が盛り上がりを見せておりますが、「OTOTEN2022」では、これらのフォーマットに関する展示がすべてと言っていいほど揃い、まさに“3Dオーディオ大集合!” というこれまでにない体験の場となりました。

また、「若者にオーディオ文化を広める」という協会の指針の一環として、OTOTENに若者を誘致するため、日本音楽スタジオ協会ならびに各スタジオなどのご協力も得ながら、大学生や専門学校生向けのセミナールームを用意しました。これは音楽作品が作られていく過程をプロの方々に語っていただくことで、将来、音楽制作に携わる希望を持った学生たちに理解を深めてもらいながら、その一方で様々なオーディオ機器の展示も見てまわってもらおうという狙いで、このような機会を設けました。


学生セミナールーム

さらには、後ほど学生インターンシップ実施の章のところでも述べますが、音響芸術専門学校の学生に、インターンとしてイベント運営に関わってもらい、交代時間に各社のブース見学やセミナーに参加してもらいました。

出展社の皆様から、「若い人が目立った」、「カップルが来ていた」といった反応をたくさん頂いており、上記のような施策が効果をもたらしたのではないかと考えております。若い人はイヤホンやヘッドホンにしか興味を示さないとよく言われますが、イヤホンやヘッドホンの分野でも高音質な製品が非常に望まれておりますし、そのような音質に興味のある若者たちがスピーカーから出る生の音を聴いて、感動した!という声もよく聞いております。また昨今、復活したレコードでも製品やソフトに群がる若者も数多く見受けられました。

2. 会場の様子

開場は両日とも午前10時予定でしたが、8時半には出展社の皆さんの受付を開始し、各々ブースのセットアップに向かってもらいました。9時半頃には、写真のように開場を待ちわびた一般来場者の皆さんが行列をなしておられました。朝からすでに熱気に包まれ、開場と同時に皆さん、一目散にお目当てのブースに駆け出して行かれました。


開場を待つ来場者の皆様

10時半頃には、校條亮治・前会長がお見えになりました。出迎えた小川会長、末永専務理事に「OTOTENが開催できて、ほんとうに良かったね。おめでとうございます!」とご挨拶され、お元気そうな顔を見せていただきました。顔の広い校條さんですから、いろいろな方々が駆け寄って来られ、ご挨拶が続いていました。久しぶりのリアルな対面ということから、終始楽しそうに語らっておられました。


(左より) 末永専務理事、校條前会長、小川会長

午後には、経済産業省・情報産業課の西川課長、村上課長補佐がお見えになりました。西川課長は初めてOTOTENに来場されたそうですが、色々な展示を興味津々にご覧になりながら、「オーディオって奥が深くて面白いですね!」とおっしゃっていました。また、昨今の半導体不足の影響を知りたいとのお話があり、会長と専務理事から業界の事情説明がされ、しっかりと聞いておられました。


(左より)小川会長、村上課長補佐、西川課長、末永専務理事

さて、ソーシャルディスタンスの観点で、展示各社は座席に余裕をもって音を聴いていただくスタイルを採っているところが多かったのですが、どこの部屋も常に満杯という状態で、製品を担当したエンジニアなどから直接話を聞くことができるというOTOTENならではの機会をしっかりと堪能されている様子が伺えました。一部ではありますが出展社のブースの様子を写真でご紹介いたします。

3. 3Dオーディオの展示

入場ゲート近くに設営されたNHKのブースでは、22.2chのデモンストレーションとパナソニックのブルーレイDIGA「DMR-ZR1」を使って、22.2chをDolby Atmosに変換するデモンストレーションが行われました。また、その隣ではアストロデザインによるカプセル状の22.2chチェアスピーカーの展示があり、非常に人気を博していました。

G507にはDTS:Xを推進するdts Japan、G508にはAuro-3Dを推進するWOWOWがブースを構え、G502のヤマハミュージックジャパンは7.2.4chのシアターでDolby Atmosの他、Disney+やApple Musicなどの空間オーディオのデモを、G510のJVCケンウッドはEXOFIELDのデモを行っていました。G610のソニーは360 Reality Audioのデモンストレーションを「HT-A9」で行っていました。4台のスピーカー同士でそれぞれの配置を検出し、最適な音場空間を作り出すそうです。

6/11 のお昼には、G701のセミナールームでキーノートスピーチが行われ、以上で述べてきたような会場で体験できる3Dオーディオの数々がAV評論家の麻倉怜士氏により解説されました。この部屋の様子はKORGのLive Extremeを使って配信されましたが、ソニー製の単一指向性マイク「ECM-100U」を8本使って「ORTF-3D」方式の収録を行い、バイノーラル処理を施し、まさにその会場にいるかのようなイマーシブな配信が行われました。この配信に関する技術的な詳細は、別記事にてご紹介いたします。

4. 学生インターンシップの実施

今回、音響芸術専門学校の学生75名にインターンシップとしてOTOTENに参加していただきました。学生の皆さんにはイベント運営の体験をしていただくと同時に、各社のブースを見学したり、G410にて開催された学生向けセミナーを受講してもらいました。慣れぬイベント業務から当初は足が痛い!などの不満を漏らす学生たちもいましたが、出展社の方から「ご苦労様です」とねぎらっていただいたり、来場された方から「ありがとう」という言葉を頂戴するうちに、働くことの楽しさを見つけ、また各自で工夫をしていくという成長も見られました。セミナー受講では自分が目指す音楽業界の大先輩からのメッセージに新たな夢や将来の希望も見えてきたようです。ブース見学では高級オーディオの奏でる素晴らしい音に感動したり、イマーシブオーディオの音の広がりに驚いたりと、「良い音との出会い」をしっかりと体験していました。良い音を知った彼ら彼女らは、将来必ずやオーディオファンとなり、次世代のオーディオ文化を作っていってくれるものと期待しております。一方で残念な話もありました。「若いせいか、相手にしてもらえないことがあった」という学生の声があったのです。将来ファンとなってくれる可能性のある若者との絶好の接点であるにも関わらず、学生からこのような声が聞こえてしまうことに、非常に寂しさを覚えました。

5. 事前登録について

今回、新型コロナ感染拡大防止のため、出展社、関係者を含む全来場者の皆様に「マスクの着用・手指消毒・三密の回避」と共に、来場者を把握しておくことが関係省庁より求められておりますので、事前登録をお願いいたしました。皆様のご協力もありクラスターの発生を起こすこともなく、無事OTOTENを閉幕することができましたが、事前登録については多くの課題も出てまいりました。今回、OTOTENでは初となるWEBエントリー方式を採用いたしました。コンサートや各種イベントでは従来から事前登録が採用されておりますが、オーディオイベントでの事前登録はほとんど前例がないため、登録受付開始の直後から協会への問い合わせが続発し、電話やメールを多数頂戴いたしました。その内容は「うまく入力できない」、「申し込み完了のメールが来ない」という相談が多く、そのほとんどがパソコン環境、迷惑メール設定、古いブラウザの使用などから起因するものでした。他方、「申し込み画面がわかりづらい」、「2日間それぞれ異なるIDやパスワード設定が必要なのは非効率」「家族で行きたいが子供はメールアドレスがない」など、ユーザーインターフェース上のご不満の声も頂戴しました。また、個人会員の方への優先的入場方法についても検討して欲しいとの声も頂戴しました。

これらの声を改善課題としてしっかりと受け止めて、次年度の運営に反映していきたいと考えております。

6. ロジスティックス

出展社の皆様にとって、自社製品の搬入・搬出がいかに効率よく行われるかは、大変重要なポイントであることを認識しております。今年度は物流パートナーを(株)近鉄コスモスにお願いし、何度も事前打ち合わせとシミュレーションを行ってまいりました。出展社の皆様のご協力もあり、開催前日の午前中にはほとんどの搬入を完了できました。また搬出においても大きなトラブルもなく、無事各社の機材を早々に搬出、さらにはお戻しすることができました。出展社各社の荷量から想定される搬出入時の混雑箇所を事前に明確にしておき、そこに必要なスタッフの配置、また過剰荷量となった際の回避導線の確保など、リスク回避を行ったことが功を奏したと捉えております。事前の大型機材の他、様々な荷物を手際よく物流が行えたことは大きな成果となりました。今後も出展社の皆様のご意見を参考にしながら、更に円滑な物流が来年も行えるようにしてまいります。

7. 来場者分析

従来は来場者数やプロフィールは目測や一部の方へのアンケートのみによる発表であったことから、その正確さには大きな疑問がありました。今回、事前登録による来場受付を行ったことにより、OTOTEN来場者のプロフィールを的確に数値化でき、正確な報告ができるようになりました。そこから見えてきたことを以下に記します。

来場者数3,395名 (男性2,926名、女性391名、未回答78名) 
平均年齢52.1歳 (64歳以下83%、うち39歳以下21%)


来場者の世代構成比

OTOTEN2022の来場者の多くは40~64歳の年齢層です。一般的にオーディオファンは年配の方が多いというイメージがありますが、OTOTEN2022では現役世代の方も多く来場されました。また39歳以下の若い世代の来場者は21%を占めました。若い世代の来場者が多かったのは今年挑戦したPRの強化、またSNSを用いての広告効果が表れた結果と分析しております。

オーディオイベントは男性来場者が多い傾向にあり、OTOTEN2022においても86%が男性ですが、下表の様に若い世代ほど女性来場比率が高くなる傾向が見られました。OTOTENで目にすることができるものを若年層女性の興味関心に当てていくことが、今後の女性来場者を増やすためのカギとなると言えると思います。


年齢別男女構成比

今回来場された方の半数近い方はOTOTENに初めて来場されております。過去においても初来場者が半数近いウェイトを占めていたことがわかっており、多くの来場者のリピーター化ができていないという課題が浮き彫りとなりました。既来場者への次期開催アナウンスの適切な告知、また飽きさせない展示が必要になります。


世代別来場回数

「OTOTENを何で知ったか?」という情報ソースについては、世代によって異なることが明らかになりました。若い世代はSNSを利用していることから、「友人・知人の紹介」が非常に大きなウェイトを占めております。一方で40歳以上になりますと協会のメールマガジン、専門媒体の記事で知ったという傾向が高く、基本的にはネットを使った情報入手なります。どの世代に何の情報を発信していくかという広報活動を適切に行うことが、これからのOTOTENをさらに盛り上げていくために重要であることは言うまでもありません。

事前登録の受付開始直後と開催直前に非常に高い来場登録をしていただいております。直前に登録された方のほうが来場者比率は高くなりました。この結果から、開催直前での詳
細な展示内容や告知が来場率アップに結び付くことが見えてきました。次年度の開催アナウンスの時期や開催日までの広報活動についても、これらデータを分析し、検討してまいります。


日別事前登録者数とその来場者数

8. 来年に向けて

新しいファンの獲得と改善すべきことについて述べていきます。

今年度については既述の通り「若い方の来場が多かった」という声を多く頂いております。若い世代の来場者を増やしていくためには、今年実施いたしました「学生向けセミナー」のように、若い世代に向けた内容を充実させていくことが必要だと考えています。OTOTENが出展社の皆様にとって、若年層・女性といった新しいファンの創出やブランド認知を高める機会となるように、協会としては引き続き若年層・女性の来場者増を目指した活動を継続します。

また、今年度は新型コロナ感染拡大防止の観点で、カーオーディオの展示をしませんでしたが、これらを求める声は多く、復活させていきたいと思います。その他にも、昨今のテレワーク用機材のように、新たな音のソリューションに関わる新規出展社を招聘し、幅広い顧客層に応えるOTOTENの実現を目指します。

無事閉幕した今年のOTOTENですが、改善していくべきことも当然あります。今年はコロナ禍という特殊な環境下でOTOTENを開催いたしました。そのため開催可否の判断に時間が掛かり、出展社の募集も直前となってしまい、ご迷惑をお掛けしました。募集時期や連絡方法について改善してまいります。事前登録については、煩雑すぎるという声を頂戴しており、よりスムーズな事前登録を実現すべく改善を図ります。

最後になりますが、出展社の皆様には、来場者が毎年継続してOTOTENに来たくなるような興味・関心に応える展示を今後ともよろしくお願いいたします。また、新しいファン獲得のためにも、特に若年層が共感できる試聴イベントや優しい説明、優しい対応を行っていただくことで、OTOTENの成功のみならず、オーディオ業界の発展につながっていくものと感じております。

今後とも、OTOTEN開催にご理解とご協力をよろしくお願いいたします。

執筆者プロフィール

八木 真人(やぎ まさと)
2022年2月、日本オーディオ協会に入職。主にイベント関係を担当する。