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JASジャーナル目次
2026winter
新発想電源タップ:
Platinumシリーズのご紹介
株式会社光城精工 取締役 電源事業部 部長 土岐泰義

概要
光城精工は昨年(2025年2月)で創立35周年を迎えました。オーディオ業界に参入したのは20年前の2005年。当時はオーディオ用クリーン電源のDA-7シリーズ(DENKENブランド)を生産し人気となりました。電源タップの生産を開始したのはそこから遅れること10年、2015年だったと思います。後発も後発、名だたるアクセサリーメーカーが存在するなか、「今さら製品化したところで市場は受け入れてくれるのか?」という不安がよぎります。困難極まりない挑戦が始まりました。
しかし、後発メーカーなりのメリットもあります。それは先発メーカーが販売する電源タップの弱点を知ることです。多くのメーカーの製品をかき集め検証しました。それは音質的な面に留まらず、価格、機能、使い勝手のほか、ユーザーが持つ不満、日本の家屋事情という利用環境なども含め分析を行いました。そこから誕生したのがForcebar(フォースバー)シリーズです。当時は20,000円(税別)を切るプライスで販売されていたものもありました。リーズナブルでハイコストパフォーマンス。設置性が高くスリム。利便性を高めるためのコンセント配置とその方向。振動対策を筐体機構に取り入れたM.I.S.(メカニカル・アイソレーション・システム)などなど、枚挙にいとまがありません。
なかでも秀逸だったのが連結機能です。同機能はタップ同士の接続(ドッキング)を指し、電源タップの機能を拡張させるというものでした。Forcebarシリーズはそれぞれ単一機能を持ち10種類にも及びました。コンセントの口数が足りなくなったら、連結追加することで口数を拡張。ノイズ抑制をしたい場合はフィルターを搭載したモデルを連結するなど、オーディオシステムの構成に合わせ、電源タップを構築できるよう配慮しました。
現在はこういった拡張機能、利便性などが継承され、Crystal(クリスタル)シリーズとして販売されています。前述のように弊社は創立35周年を迎えました。これまではリーズナブルなモデルを投入してきましたが、光城精工がもしハイエンドな電源タップを造ったらどんなことになるだろう?市場はどんな反応を示してくれるだろう?という想いにかられました。
メーカーとして先駆者達に肩を並べることができるだろうか?いや、超えてやろうじゃないか!不安と同時に好奇心がスタッフ、開発陣に芽生えます。本稿では35thアニバーサリー+Jtune(ジェイチューン)モデルとして2025年9月に市場投入した、Platinum4-VP/6-VP(各限定50台)の開発背景と共に、同シリーズの斬新で突出した技術を紹介します。
1. はじめに
光城精工では新製品の開発にあたり企画書が作成されます。製品企画書の中には、当然要求する機能や性能、外観等が盛り込まれるわけですが、それ以前に「開発目標」というものが設定されます。それは「自社のため」、「ユーザーのため」、「社会、地域のため」という3項目です。なかでも「ユーザーのため」は最重要視されます。Platinum4-VP/6-VPの開発において、「ユーザーのため」に記された目標は「光城精工が本腰を入れてハイエンド電源タップを造ると凄いことになる!その驚きを提供する」という内容でした。
そう「驚き」です。強烈なインパクトをもって「光城精工はこんなことやってしまうんだ!」、しかもそれが「これほどまでの効果を生むんだ!」と言わしめることです。とはいえ、そう簡単にできるものではありません。「はてさて?どうやって皆を驚かそうか……」。
2. 驚きを生むために 6.↓ 11.↓
驚きを生むためにはやはり現状を知る必要があると考えました。現在市場で販売されているハイエンド電源タップがどんな機能や性能、特性を持ったものなのか、見たいこと確認したいことは沢山あります。調査の結果、以下のような共通項が見えてきました。
<内部配線材>
- ① 拘りを持ったオリジナル極太ケーブルの採用
- ② ブスバーを取り入れた大電流対応
いずれもインピーダンス低減に努めている。
<機構/構造>
- ③ 合金素材の削り出し筐体
- ④ ダイキャスト筐体
- ⑤ 上記③あるいは④と板金加工品のハイブリッド
- ⑥ 各社オリジナルの制振構造の採用(インシュレーター含む)
見栄えと共に剛性を高め、制振性やノイズ抑制効果、耐性を特長としている。また、筐体内部のセパレート化やパラレル配線によって、電源経路を独立分離。相互干渉を排除する設計などが見られた。
<パーツ/素材>
- ⑦ 勘合性(接触抵抗低減)が高められる高品位なパーツ選定
- ⑧ コンセント、インレットに対し音質的な安定性と高品位化が図られるメッキ処理
いわゆるオーディオグレード的なパーツ選定が行われ、接触抵抗や音質効果を高めるために特殊メッキ等が採用されている。
オーディオ用電源タップの場合、言わずもがなその目的は高音質、高品位化にあります。上記調査結果から以下の3つのキーワードが考えられました。
- 振動対策
- インピーダンス低減
- ノイズ対策
いずれもオーディオにとって重要視すべき課題であり、的を射たものと思っておりますが、ノイズ対策という面においては、いずれもフィルター的なものの採用はなく、金属筐体による遮蔽や、吸収材で得られるシールド対策的なものでした。これは同時に商用電源特有のダイレクト感を損なわないよう、エネルギーロスを抑えつつワイドレンジにS/Nを改善するという狙いがあるものと思われ、これらは材料工学的なアプローチで微小ノイズを抑えています。
さぁ、ハイエンド電源タップの全容が明らかになってきましたが、でもやっぱり「はてさて?どうやって皆を驚かそうか……」。
3. 着目したのはインピーダンス低減
前項目で「エネルギーロスを抑えつつ」というワードがありましたが、これは安に電源ラインのインピーダンス低減を指しています。電源ラインのインピーダンスには、ケーブルやブスバーが保有するインピーダンスが大きく関わっており、このインピーダンス如何によっては、電圧レギュレーションや高周波ノイズに影響します。つまりインピーダンスの低減はノイズ抑制にも繋がるということになります。ゆえにハイエンド電源タップのメーカーは、このラインインピーダンスを低減するために、極太ケーブルで高周波特性に優れたケーブルを採用するわけです。
4. そもそもインピーダンスって何?
回路設計やノイズ対策を実施するうえで良く耳にするのが「インピーダンス」です。交流は直流と違い、周波数によって抵抗(インピーダンス)が変化します。図1は、タフピッチ銅線IV1.6(2sq)長さ200mmに数ボルトの交流電圧を印加し、低い周波数から高い周波数(20Hz~2MHz)までスイープした際のインピーダンス特性です。図から解るように、周波数が高くなるにつれインピーダンスが上昇しています。
インピーダンスの増加は10kHz付近から始まり、100kHzを超えたあたりから急激に増加する様をとらえています。10kHzにおいて約0.01Ω、100kHz:0.1Ω、1MHz:1Ω、2MHzにおいては2Ωを超えています。これは同時に、線材のインダクタンス成分が支配していることを示しています。なぜ純度の高い銅線なのに、周波数が高くなるにつれインピーダンスが高くなるかについては、「7. インダクタンスの低減」で触れたいと思います。
5. インピーダンス低減によるメリット
すぐさま本項目タイトルの革新に迫りたいところですが、もう少しお付き合いください。回路設計分野において一般的なオーディオ機材の負荷形態はコンデンサーインプット型負荷と称されます。オーディオ機材の入力には交流電源が供給され、トランスを経由したのち整流回路(ダイオード)+平滑回路(コンデンサー)を経て、各電子回路に直流電源として供給されます。
図2にトランスを省略したコンデンサーインプット型負荷の簡易回路構成を掲載します。
また、図3は図2の回路に電源(AC100V)を加えた時のシミュレーション波形です。図3からお分かりの通り、電流は入力電圧(正弦波)のピーク電圧付近のタイミングにおいてのみ流れています。これは図2のアルミ電解コンデンサー:C1に充電する電流になります。

図3 シミュレーションによるコンデンサーインプット型負荷の
入力電圧、電流波形
更に話は脱線しますが、この電流波形が問題なのです。何もこの電流波形に限ったことではありませんが、実はこの電流波形は、様々な周波数の正弦波(高調波)が合成されて形作られています。せっかくなので、このコンデンサーインプット型負荷に流れる電流波形にどんな高調波成分が含まれているかシミュレーションしてみました。

図4 コンデンサーインプット型負荷の入力電流を9次高調波成分まで展開
図4はコンデンサーインプット型負荷の入力電流波形を9次までフーリエ展開したシミュレーション波形です。3次、5次、7次……といった具合に無限大まで高調波成分が含まれています。更に詳しく観ると、いずれの高調波次数も入力電流のピークと同位相です。つまりこの合算が入力電流のピークを形成していることが判ります。入力電流波形のピークが鋭くなるほどに、より高次の高調波成分(高周波)が多分に含まれることになります。
話を本題(インピーダンス低減によるメリット)に戻しましょう。一般的なオーディオ機材(コンデンサーインプット型負荷)に流れる電流波形には、前述の説明により高調波成分(高周波)が多分に含まれていることがわかりました。では、電源ラインのインピーダンスが高周波に対して大きかった場合、どのようなことが起こるのでしょうか?

図5 ラインインピーダンスを意識したコンデンサーインプット型負荷回路
図5は電源ラインのインピーダンス:Zを意識したコンデンサーインプット型負荷回路です。実際には整流、平滑回路にもインピーダンスは存在しますが、今は交流電源ラインのインピーダンスについて説明していますので無視します。同回路において、周波数50Hzに対するラインインピーダンス:Z50が0.1Ωだったとしましょう。そこに10Aの電流が流れると1Vの電圧降下が発生します。
次に3次の高調波150Hzに対するラインインピーダンス:Z150が0.2Ωだったとしましょう。そこに3Aの電流が流れると0.6Vの電圧降下が発生します。ラインインピーダンスは先の実験(図1 IV1.6のインピーダンス特性)で高周波になるにつれ上昇することがわかっているので、高次の高調波成分のレベルが低くても電圧降下が発生します。
このように、それぞれの高調波次数において電源電圧降下が発生し、電源波形がどんどん歪んでいくことになります。
図6は、弊社工場内の電源にコンデンサーインプット型負荷を接続した際の電圧、電流波形です。ピーク付近が潰れ、波形も歪んでいる様子が確認されます。この時の波形歪率は2.3%、無負荷の場合は1.6%でした。ラインインピーダンスの影響がいかに大きいかお解りいただけると思います。
電源電圧の降下や波形歪は、装置の不安定動作や誤動作を生みかねません。オーディオ機材を対象とした時、誤動作までは招かないまでも、音質に大きく影響しそうなことは明白かと思います。これらのことから、ラインインピーダンスが低ければ、その分電圧降下が少なく、結果波形歪も少なくて済む(装置安定稼働)というメリットが生まれます。
次はラインインピーダンスの低減によるノイズからの影響のメリットです。一般的に言われるノイズもまた高周波成分を多く含んでいます。図7のようなスパイクノイズの場合、振幅の周期を基本波とし、更に高次の高調波成分が含まれていることになります。
図8はスパイクノイズ発生部分を拡大した波形です。
前述のように電源ラインのインピーダンスが大きい場合、わずかな電流が流れても電圧に変換され、波形として認識できるようになります。インピーダンスが低ければ、その分電圧変換されにくくなり、そもそものノイズ発生を抑制することが可能になります。
また「4. インピーダンスってそもそも何?」で触れたように、導体におけるラインインピーダンスはインダクタンス成分の支配下にあります。インダクタンスは、急峻なエネルギー変化に対し、その逆起電力をもってスパイクノイズの発生要因となりますが、インピーダンス(インダクタンス)の低減によって、それ自体の発生リスクを低減することが可能になります。
解説ついでにスイッチング電源が発するノイズについてもお話ししておきましょう。スイッチング電源は、その名の由来通り電力ラインをスイッチングし、そのパルス幅制御でもって電圧レギュレーションを保とうとするものです。このスイッチングという行為こそがノイズ発生源となっているわけですが、回路や電源ラインにはどうしてもインダクタンス成分が含まれています。
インダクタンスは急激なスイッチのオン/オフによって振動やスパイク的なノイズを発生させます。一般的にスイッチング電源のDC出力のノイズ成分(リップルノイズやスパイクノイズ)が気にされがちですが、AC入力側にもそれらノイズが伝導され、電源タップや壁コンセント側にも影響を及ぼします。この際もAC入力側のインピーダンスが低いことが望まれます。
如何でしょう。「3. 着目したのはインピーダンス低減」で話した理由、理解がより深まったのではないでしょうか。
6. 驚きの道へ ~電力ラインの基板化検討~
「2. 驚きを生むためには」で、ハイエンド電源タップの現状について調査した折、内部配線はそのほとんどがオリジナルケーブルでした。現時点おいて我々は線材屋ではありませんので、製品を実現するためには他メーカーから購入して利用するしか手がありません。残念ながら差別化できないので面白くないわけです。
一昨年前辺りに、某社から内部配線を極力排除し、大概がプリント基板化されたプリメインアンプが発売されました。「へぇ~、面白いこと考える人もいるもんだなぁ!理にかなっていることでもあるしなぁ!」と思いました。そして「ん!?これって電源タップに採用したら面白いかも~」となりました。
しかし、同時にプリント基板で大電流流すとなると、だいぶリスキーだなとも思ったわけです。でも、やりもしないうちから諦めるのはしゃくなので、やっぱり実験することになるのです。図9は両面プリント基板の長さを200mm、導体断面積を2sq(パターン幅:55mm/片面銅箔厚:18μm)にし、図1のIV1.6線のインピーダンス特性と比較したものです。
結果を見て、正直プリント基板の威力にたまげました。低い周波数においてはIV1.6線と同レベルで推移し、10kHzあたりからインピーダンスの差が開き始めます。
図10は配線をIV線からプリント基板化した時のインピーダンスの低減値(差分)と低減率(差分率)です。プリント基板化により10kHzから2MHzにおいて、63%~83.5%(最大)のインピーダンス低減が実現しています。

図10 IV線からプリント基板化した際のインピーダンス低減値と低減率
表1 各周波数におけるIV線とプリント基板のインピーダンス低減値と低減率

数値は代表値です。導体の表面積を増やすことで、こんなにインピーダンス低減ができるなんて……。一体この違いは、何からくるのでしょうか?
7. インダクタンスの低減 4.↑
導体における高周波インピーダンスは次式で求められます。
また、L:インダクタンスは次式で求められます。導体に電流が流れると磁束が発生するので、その磁束が大きければインダクタンスが大きくなることを示しています。
IV1.6線の場合、線材に電流が流れると同心円状にその周囲に磁界が発生し、大きく空中に広がるため磁界が存在する体積が大きくなります。上式7.1や7.2にあてはめると、磁束が多いため、インダクタンス値すなわちインピーダンスが大きくなります。
一方プリント基板のような表面積の大きいパターンに電流を流すと、磁界エネルギーが最小になるよう局所集中せず面内に分散します。線材では同心円状の立体的な磁界が発生していたのに対し、プリント基板では上下の平らな磁界となり、磁界が存在する体積は小さくなります。先と同様上式7.1や7.2にあてはめると、磁束自体が少ないためインピーダンスは小さくなります。
また、パターンが広いことで測定経路内のGND(基準)との間に見えないコンデンサー(浮遊容量)が多く発生します。高調波成分はそれら浮遊容量によりバイパスされ、インダクタンス成分をキャンセルします。これによってもインピーダンスが低減されています。
簡単にまとめるとプリント基板化(パターン面積の拡大)により、インダクタンスが低減されると共に浮遊容量の恩恵を受け、インピーダンスが小さくなったと言えます。
8. 今一度仮想アース
我々はここ数年、仮想アースに力を入れてきました。
仮想アースについては、一昨年前のJASジャーナル2024年秋号おいて「仮想アースは基準でしかない! ~安定した基準は装置安定稼働をもたらす~」と題し、詳細な技術解説をさせていただきました。ご興味ある方はそちらも読んでいただけると幸いです。
仮想アースはタイトル通りで基準でしかありません。しかし基準であるためには変動しては困ります。そのため光城精工の仮想アース製品はとにかく導体面積を広げ、インピーダンス(インダクタンス)の低減に努めています。すなわち多少の電流やノイズが流れ込んでも電圧変換されず、びくともしないモノへとなっていきます。これを基準とすることで、回路や装置を安定稼働へと導くというものでした。
共通するワードが出てきました。「インピーダンス低減」です。さぁ、せっかく培った仮想アース技術を利用しない手はありません。スタッフ、エンジニア共に勇気が湧いてきます。
9. ギアシフトアップで驚きを増す
プリント基板によるインピーダンス低減の破壊力は凄まじいものでした。あのインピーダンス低減効果は半端ないですね。このプリント基板によるインピーダンス低減と、仮想アース技術の融合によって、更にインピーダンスの低減を図りたいと考えるわけです。
我々の仮想アース製品の中には、その表面積を増大させるために、アルミ電解コンデンサーの電極(±)を利用しているモデルがあります。アルミ電解コンデンサーの電極はその名の通りアルミ箔で出来ています。コンデンサーメーカーは小型で大容量化を実現するため、その電極にエッチング処理を施し、海綿体構造化することで表面積を増やす研究を日々行っています。この技術をプリント基板にも応用しようと試みたわけです。図11は試験評価に利用したプリント基板にコンデンサーを等分配置し、インピーダンスを観測したものです。

図11 プリント基板にコンデンサーを配置した時のインピーダンス
IV1.6線からプリント基板化し時ほどのインパクトはありませんが、仮想アースの技術利用による効果が十分に感じられます。
図12はアルミ電解コンデンサーの内部構造を簡易的に模したものです。±の電極間に電解紙がサンドイッチされ、バームクーヘン状に巻かれたものになっています。電気回路的に±の電極はプリント基板上のパターンと同電位になり、先の測定経路内のGND(基準)との間に、やはり浮遊容量が多く発生します。この仮想アース技術(コンデンサー配置)によるインピーダンス低減は、これに起因するものと推察しています。
かくして電源タップ:Platinumシリーズに、プリント基板を用いた内部配線と仮想アースのハイブリッド技術が採用されることになります。
図13はプリント基板+仮想アース技術(アルミ電解コンデンサー)を施した、Platinum6-VPのパワーライン基板です。

図13 Platinum6-VPのパワーライン基板(仮想アース技術)
コンデンサーはパワーライン(N:ニュートラル、L:ライブ)、アースラインいずれも、6口の出力コンセント毎に各2個配置され、インピーダンス低減に貢献しています。
10.Crystal 6.1 とPlatinum6-VPのインピーダンス比
図14はCrystal 6.1とPlatinum-6VPの最終製品としてのインピーダンス比較です。これまでIV1.6線とプリント基板によるインピーダンス比較等を行ってきましたが、最終製品としてどの程度の差があるのか比較してみました。配線長、断面積、電子部品の違いから単純比較するわけにはいきませんが、それぞれの配線仕様は以下になっています。
<Crystal 6.1>
- 配線長:約570mm(N:ニュートラルライン長+L:ライブライン長)
- 配線材:錫メッキ線1.6φ
- 断面積:2sq
<Platinum6-VP>
- 配線長:約700mm(N:ニュートラルライン長+L:ライブライン長)
- 配線材:両面プリント基板(片面70μ厚、パターン幅37.5mm)
- 断面積:2.6sq

図14 Crystal6.1とPlatinum6-VPのインピーダンス比較
測定の結果から、インピーダンスが大きくなっていると思われるかも知れませんが、先ほどの実験(図11)とは違い、配線長が共に長くなっていることに加えて、インレットやコンセントの接触抵抗などのインピーダンスも加わることから、全体のインピーダンスとして上昇したものと推察します。プリント基板および仮想アース技術の融合によって、IV1.6線との差は歴然としたものでしたが、この結果から、インレットやコンセントのインピーダンスによる影響が非常に大きいとも言えるでしょう。本事項については今後の新製品の開発に大いに役立ちそうです。
また、Platinum6-VPはCrystal6.1と比較しても配線長が長いため、不利な立場にあるわけですが、プリント基板および仮想アース技術の融合により、周波数100kHzにおいて約0.04Ω、1MHzにおいて約0.29Ω、2MHzにおいて約0.58Ω、Platinum6-VPの方がインピーダンス低減できています。
更に今回の測定によって、ほかに注目すべき点も見えてきました。図15は、図14のグラフの縦軸(インピーダンス[Ω])を、最大3.5Ωから0.1Ωに拡大して比較したものです。
低周波領域(20~1kHz)付近において、Crystal 6.1の0.017Ωに対し、Platinum6-VPでは0.011Ωと低くなっています。低周波領域においては導体の断面積がインピーダンスを支配するため、その恩恵を受けているものと推察します。
図16は、Crystal 6.1のラインインピーダンスに対するPlatinum6-VPのラインインピーダンスの低減値と低減率を表したグラフです。また表2は観測から得られた任意の周波数の代表値です。

図16 Crystal6.1に対するPlatinum6-VPのインピーダンス低減値と低減率
周波数20Hz~1kHzにおいて、37%前後のインピーダンス低減がされています。1kHz以上から低減率は低下し、100kHzまでで20%、計測限界の2MHzにおいては18%という結果でした。低周波領域のインピーダンス低減は、音質に対しても大きな影響を及ぼすものと考えられ、特筆すべき面と捉えています。ラインインピーダンスと聴感上の関係性を解明することは困難極まりないことですが、今回得られた特性が、安定したピラミッド型の帯域バランスを生み出してくれるかも知れません。
電源タップの内部配線をプリント基板+仮想アースで対応するという前代未聞(おそらく世界初!?)の取り組みによって「驚き」が誕生しました。
11. いや、もっと驚かせたい!
しかし、ここで終わらないのが光城精工です。
「2. 驚きを生むために」で3つのキーワードを掲げました。
- 振動対策
- インピーダンス低減
- ノイズ対策
前述までの内容から、プリント基板+仮想アース技術によって、インピーダンスの低減ができることは見えてきました。またこのインピーダンス低減が、結果的にはノイズ低減(正確にはノイズがそもそも発生しにくい、あるいは耐量がアップする)に繋がることがわかりました。
残るは振動対策です。
12. 振動対策 STEP1
振動対策のSTEP1として採用したのが、図17に示す専用考案された30φの円錐台(富士山型)インシュレーターです。床に対する設置面積を多くとることで安定感を提供すると共に、トップ部分に近づくに従い絞り込まれたデザインは、ハードニング特性を持った非線形ばねの性質を示します。
<非線形ばねの効果>
- 共振が一点に集中しない
- 共振ピークが広がり、鋭さ(Q)が下がる
- 音、振動的には「鳴きにくい」「クセが出にくい」
というオーディオ用途ではかなり好ましい特性となります。またハードニングという特性から、荷重が増えるにつれ硬くなります。わかり易く言うと軽い荷重ではしなやかに、重い荷重(衝撃)では強くなります。この特性をうまく活かすには、コンセントプラグの接続数(荷重)が少ない場合は3点支持 ※1、接続数(荷重)が多い場合は4点支持 ※1をお勧めします。更にこのインシュレーターの底面には1mm厚のハネナイトを貼り付けハイブリッド化。ハネナイトには振動の減衰を担わせています。
※1 Platinumシリーズは3支持または4点支持ができるよう設計されています。
13. 振動対策 STEP2
振動対策の総仕上げです。振動対策については、幸いにもエントリーモデルとして販売しているCrystalシリーズで実績がありました。ご存じの方もいらっしゃると思いますが、「メカニカル・アイソレーション・システム」、略して「M.I.S.」です。
M.I.S.は電源タップ内の全パーツ(コンセント、インレット、プリント基板など)をユニット化し、トップカバーに吊り下げるというものでした。オーディオ機材含め、電源タップは床からの振動を大きく受けます。この振動は音質に対し大きく影響するものと言われています。M.I.S.はこの振動に対し大きな効果をもたらすものとして採用してきました。
図18に示されるように、Platinumシリーズの機構構成は大きく4つに分けられます。
- ① トップカバー
- ② サブシャーシ(ユニット)
- ③ メインボディー
- ④ ボトムカバー

図18 M.I.S.が取り入れられたPlatinumシリーズ
トップカバーおよびボトムカバーは肉厚アルミ無垢材を切削加工し、メインボディーは2mm厚のスチールに加え、同2mm厚の重ね合わせによって剛性をアップしています。サブシャーシにはステンレスを採用し、すべてのパーツ(コンセント、インレット、プリント基板などのあらゆる部品)が同シャーシに組み込まれユニット化しています。
ユニット化されたサブシャーシをトップカバーに吊り下げる部位は、振動の侵入源となる床から最も離れた位置に配置され、距離による振動減衰も効果的に利用しています。サブシャーシユニットは、トップカバー、メインボディー、ボトムカバー等の外筐から切り離され、更に唯一接点となる吊り下げ部分には、制振ワッシャーM2052 ※2を採用。外部からの振動をより効果的に抑制しています。
上記は設置された床や空気伝搬で入り込む振動の対策として大変有効に作用するわけですが、これだけではまだ不十分です。電源タップは使用上、入力電源ケーブル(インレットプラグ)や各種接続機材の電源ケーブル(コンセントプラグ)が接続されます。せっかくサブシャーシを吊るして外筐と遮断しているのに、接続されるケーブルプラグが外筐に触れてしまっては何の意味もありません。
Platinumシリーズを使いこなし、よくよく観察すれば見えてくるのですが、Platinumシリーズのインレットやコンセント窓は、接続プラグが直接外筐に触れないよう、口径窓サイズをひと回り大きくしており、デザイン(高級感を醸し出す意匠性)と機能が共存できるよう設計されています。(図19参照)
調査で確認された他メーカーのハイエンド電源タップでは、主に材料工学的なことでその振動対策が行われていますが、ここにも光城精工オリジナルの機械構造的振動対策が施されています。
※2 国立研究開発法人物質・材料研究機構[NIMS](旧:科学技術省材料研究所)が1995年に特許(特許番号:第2849698号)を出願した合金。Mn(マンガン)73%+Cu(銅)20%+Ni(ニッケル)5%+Fe(鉄)2%からなるMnベースの合金で、振動負荷を受けた際、合金内に双晶活動(発生・消失・移動)が起こり、今までの合金にはみられなかった高い制振性を生むとされています。
14. 音質傾向
オーディオファイルにとって、ステレオ再生における立体的音場の再現はまさに醍醐味です。近年、我々が注力してきた仮想アース製品は、その音質効果がステレオ領域を超えた領域(立体的音場)に達するものとして「2ch超越ゾーン突入」というキャッチコピーが話題となりました。Platinumシリーズが提供する音質効果は、ついにそのゾーンをも突破!いよいよ「没入世代」へと移行します。
これまでPlatinumシリーズにおけるインピーダンス低減(ノイズ対策含む)や振動対策など、電気的、機械的理論に基づき解説してきました。読者またはオーディオファイルにとって、これら内容は製品開発のコンセプト(思想や狙い、特長)を知るうえで参考になるものと思いますが、最終的には出音になります。どれだけ理論や理屈を並べても、出音に満足してもらえないのであれば何の意味もありません。
とかくエンジニアはいかに凄い技術を投入し、その結果、どれほど素晴らしい(電気的)特性を叩き出せたかを熱く語りたくなるわけですが、言ってしまえば自己満にすぎません。ただ、その電気的特性と出音の関係性を見出すことができれば、それはメーカーのノウハウとなって行くわけです。インピーダンス低減を実現し、独自の振動対策が盛り込まれたPlatinumシリーズの音質的特徴として、以下のポイントが挙げられます。
- ノイズフロアが低下し、微小信号の再現性が向上
- 過渡応答が向上し、アタックとディケイの忠実度が改善
- 低周波領域のインピーダンスが低減できたことで、低域の制動力が増加
これら音質的特徴をバランスよく保つことで空間表現を際立たせます。
より明快、明瞭になった出音は前方へとせり出しつつ邪魔をせず、微弱な音は後方へと配置され奥行き感を演出します。応答性の向上は楽器本来の特性やニュアンス(それっぽさ)を表現。制動力が増した低域は安定したピラミッドバランスを提供し、起伏に富んだ立体的音場を再現してくれます。
このPlatinumシリーズ(没入型電源タップ)は立体的音場を再現するツールのひとつであり、更にそれを獲得したうえでの音楽鑑賞は、まさに没頭を表し没入へと誘ってくれます。今度は「ゾーン突破!没入型アクセサリー(図20)」です。
15. その他の特長
Platinumシリーズでは、上述のようなインピーダンス低減(ノイズ対策含む)や振動対策のほか、盛沢山な特長があります。主に以下のようなことが挙げられます。
仮想アースの追加
Platinumシリーズにはアース端子が設けられています。プリント基板によるアースラインは全て導通状態にあり、このアース端子とも接続されています。プリント基板のアースラインにはアースパターンを拡大する仮想アースが実装されていると共に、このアース端子に既存の仮想アース(BOX型/スティック型)を接続して、更に導体表面積を増加させることができます。(図21参照)
また、空きコンセントがある場合、ACプラグ型仮想アース:Crystal Eop-Gを接続して、表面積を拡大することも可能です。(図22参照)
高性能なパーツ群
インレット、コンセントをはじめとする高性能パーツを採用。
高いユーザビリティー
昨今のオーディオ機材はACアダプターを使用する傾向があります。最近のACアダプターは小型、軽量でありながら、取り付けられる方向や形状は様々です。一般的に電源タップは2連タイプのコンセントが利用されていますが、場合によっては1口を塞いでしまうことがあります。Platinumシリーズは、コンセントの間隔を広くとり、様々な形状のアダプターにも対応できるよう配慮されています。
デザイン
貴金属のプラチナからイメージする印象は「高級」「純粋」「洗練」などでしょうか。我々が提供するPlatinumシリーズはまさにここにあります。これまでの電源タップには見ないキラリと光る意匠!トップカバーには従来シルク印刷で表示されていたN極やアースマークを取り止め、Platinumという称号とKOJO TECHNOLOGYのブランド名のみをレーザー刻印。
トップカバーおよびボトムカバーの表面処理は、サンドブラスト加工にアルマイト処理が施されており、嫌みのない落ち着きがシンプルでありながら優美さを兼ね備えています。またトップカバーから排除されたN極とアース極のマークは、トップカバーのアイコ二ックなコンセント窓から覗く鏡面仕上げサブシャーシへ移行。平面的なデザインになりがちな電源タップに対し、機能的な理由から採用されたM.I.S.と相まって奥行きのある立体的なデザインとなっています。
メインボディーはクールグレイと称されるホワイト系梨地マット色で塗装され、純粋さを醸し出しています。振動抑制のために本体隅に設けられた専用インシュレーターもまた、本体の安定性を向上させると共にデザイン的な安定性をもたらしています。
Platinumシリーズは機能美と洗練された高級感溢れるデザインに仕上げられ、35thアニバーサリー+Jtuneモデルに相応しい“プラチナムな”製品となっています。

図23 洗練された機能美と高級感が融合したプラチナムデザイン
(写真はPlatinum4-VPおよびPlatinum6-VP)
製品の詳細や特長については、下記URLにてご確認ください。
<Platinum4-VP>
https://kojo-seiko.co.jp/products/platinum4-vp.html
<Platinum6-VP>
https://kojo-seiko.co.jp/products/platinum6-vp.html
16. 今後の電源タップについて
最近の光城精工はハイコスト製品の生産に方向転換したのだろうか?と感じている方もいらっしゃるかも知れませんが、決してそのような考えはなく、今後もリーズナブルでハイコストパフォーマンスなモノづくりも継続されます。いずれ本稿で掲載した内容が継承されるかたちで、新たな電源タップも誕生することでしょう。
キーワードは
- 振動対策
- インピーダンス低減
- ノイズ対策
そして「没入型アクセサリー」です。
■ Joker8+VPsのご紹介
このたび、Platinumシリーズを更に発展させた「パワーコンディショナー:Joker8+VPs」を1月に発売しました。(図24参照)
5口のフィルターラインと3口のダイレクトライン、計8口の出力コンセントに加え、仮想アース接続専用のコンセント(赤)を兼ね備えると共に、新たに開発した振動対策機構「M.I.S.+β」が取り入れられたパワーコンディショナーです。Platinumシリーズ同様、35thアニバーサリー+Jtuneモデルとなっており、生産台数は限定25台です。また先着20台には専用オリジナルケーブル(非売品)が付属される特典付きとなっております。
製品の詳細や特長については下記URLにてご確認ください。
<Joker8+VPs>
- 製品詳細
https://kojo-seiko.co.jp/products/joker8.html - リリース案内
https://kojo-seiko.co.jp/products/joker8.html

図24 パワーコンディショナー:Joker8+VPs(2026年1月発売)
17. 最後に
いかがでしたでしょうか。あくなき探求心と、独創的なアイディア、チャレンジ精神をもって取り組んだPlatinumシリーズは、現在の光城精工があわせもつ技術の集大成となっています。その内容もまた惜しみなく紹介させていただきました。
途中、製品解説から脱線するような面も幾つかありましたが、同製品の技術的裏付けや思想をご理解いただくためのものと、敢えて掲載させていただきました。ご了承ください。また本寄稿を通じて、オーディオアクセサリー市場、しいてはオーディオ市場の発展に、多少なりとも貢献できればと願うと共に、今回このような機会を与えてくださった日本オーディオ協会様に感謝ならびにお礼を申し上げます。
執筆者プロフィール
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- 土岐泰義(とき やすのり)
株式会社光城精工 電源事業部 取締役部長
1968年生まれ。財団法人半導体研究振興会 半導体研究所(現在は閉所)にて、Mr.半導体と言われた故・西澤潤一博士に師事。2年間研究生としてパワーデバイスの応用技術に従事。後にパワーデバイスを応用した無停電電源装置やクリーン電源、スイッチング電源等を製品化。三十余年のエンジニア生活を経て、現在は製品企画やプロモーションほか、製品デザイン、個装デザインまで手掛けるマルチ対応型取締役部長。
















