2025autumn

大阪・関西万博を振り返って

一般社団法人日本オーディオ協会 会長 小川理子

10月に入り、虫の音に秋の風を感じるようになりました。酷暑の夏を乗りきり、過ごしやすい季節の到来を待ちわびておりましたが、皆様方におかれましてはお変わりございませんか。

さて、大阪・関西万博が10月13日、6カ月間の開催期間に幕を降ろしました。158カ国・地域、7国際機関の公式参加者が大阪夢洲の地に集い、「いのち輝く未来社会のデザイン」というテーマで、歴史、文化、芸術、科学技術などを、それぞれの理念で表現し、様々なプレーヤーが対話し、議論し、共創し、実験し、実装し、表現して見せました。地球規模の社会課題を解決するために、多様な知恵を持ち寄って共創していこう、という21世紀型万博のあり方を示すものでした。そして、「いのち」に向き合うという奥深いテーマの周辺に、人間本来に備わる「陽」の「気」を存分に引き出す「祭り」「音楽」「舞踊」「食」など連日様々なイベントが繰り広げられ、閉幕前には、まさしく熱狂の渦が出現しました。

私も博覧会協会理事として、参加国を迎賓する立場で、多くの公式行事に出席しました。公式行事では、その国・地域固有特有の音楽や舞踊、舞踏が披露されました。音楽には民族楽器、舞踊と舞踏には民族衣装がつきものであり、民族楽器も民族衣装も、万博のために海を渡って本物が持ち込まれ、一流の方々が芸術として表現してくださいますので、それを目の前で見せていただくだけでも貴重な経験です。そして、国・地域によって、なんと多様な文化芸術が発展してきたことか、その時間の流れや、国や地域の関わり合いを感じながら、音楽を奏でるオーディオは、産業としてのみならず、文化としてしっかりと継承していかなければならない、とあらためて強く感じました。

先日、万博を機に開催されている日本国際芸術祭の講演会で、文化庁長官の都倉俊一さんとご一緒させていただきましたが、一般社団法人CEIPA(カルチャー アンド エンタテインメント産業振興会)が主催するMUSIC AWARDS JAPANについて、滔々と話をされました。日本のコンテンツ輸出額(アニメ、ゲーム、音楽、映画など)は、今や半導体や鉄鋼を抜いて自動車に次ぐ2位、約5.8兆円に達しており、日本の成長を牽引する主要な産業として期待されています。経産省は2033年までに輸出額を20兆円に引き上げる目標を掲げ、具体的な行動計画を打ち出しており、その一つのアクションがこの音楽に関するAWARDである、ということをお話しされていました。

日本の基幹産業と位置付けられたコンテンツと表裏一体のオーディオを、これからどのようにデザインするか、文化と文明の両輪、ココロとモノとが共に豊かな社会、これを業界あげて取り組みたいと思います。今年のOTOTENにはMUSIC AWARDS JAPANの実行委員長にもお越しいただき、創設の経緯などを興味深くお聞きすることができました。今後とも継続的に関係性を構築させていただきたいと思っています。