2021spring

ORSONIC(オルソニック)ブランドとサファイアオーディオアクセサリーのご紹介

アダマンド並木精密宝石株式会社精密宝石事業統括本部 営業本部 営業2部 DIA営業課 課長米山 浩司

概要

アダマンド並木は、戦前からダイヤモンドをはじめとする各種宝石の精密加工のエキスパートとして、オーディオ製品に関わるキーパーツから工業製品など幅広い分野で製品を提供してきました。弊社の強みである宝石の精密加工技術を生かした新製品サファイアオーディオアクセサリー「スタビライザー」、「カートリッジスペーサー」、「インシュレーター」をご紹介します。

ABSTRACT

Since its founding in 1939, Adamant Namiki has been a global leader in precision processing of industrial jewels such as diamond, and has provided products in a wide range of fields, from key parts for audio-visual products to industrial goods. We have taken full advantage of our strength in precision processing technology for industrial jewels, and have launched a new analog record stabilizer, cartridge spacer, and insulator.

1. はじめに

アダマンド並木精密宝石株式会社は、戦前から各種宝石の精密加工のエキスパートとして、幅広い分野で製品を提供してきました。主なオーディオ関連部品では、レコード針を1949年より製造し、サファイアレコード針からダイヤモンドレコード針へと現在でも世界中のアナログオーディオファンにご愛用をいただいております。私たちは1978年にORSONICブランドを立ち上げました。オルソニックの名前の由来は、オールは全て、ソニックは音、全ての音を忠実に再現することを目指した名前です。当時、アダマンド並木は、レコード再生針、録音針で国内外でのレコード市場を席巻していました。ノイズを低減し、如何に忠実に音を再現し、臨場感あふれる音を家庭に持ち込めるか。オーディオ機器の性能向上のために、ターンテーブル、トーンアーム、周辺機器を結ぶ同軸ケーブルなどの各種マニアックなオーディオアクセサリーが次々と開発商品化されました。しかし1980年代の後半、CDの台頭と共にORSONICは休眠となりました。

そして2020年、レコードブームと共にORSONICブランドを復活させました。新生ORSONICの目指すところは、私たちが得意とする人造ダイヤモンド、サファイアなどの高硬度素材の先端加工技術を用いて、20世紀のアナログサウンドから21世紀の新たなアナログサウンドに創り変えることです。音とは本来、周波数の連続性を楽しむものです。今、私たちORSONICは、21世紀の最新技術を投入して、如何にアナログの音を原音忠実に再現し、クリスタルサウウンドを楽しめるか挑戦いたします。今回はブランド復活記念としまして、単結晶サファイアを用いたオーディオアクセサリーを製品開発しましたのでご紹介させていただきます。

2. 本文

2.1 サファイアとは

ダイヤモンドに次いで多く人々に知られている宝石が、ルビーとサファイアです。どちらも主成分はアルミニウムと酸素です。鉱物名はコランダムですが、日本名では鋼玉ともいわれております。純粋なコランダムは無色な石、白色ですが不純物を含むために、赤、青、黄、緑、紫、ピンクなど様々な色に着色されているケースがあります。そのうち赤色透明の物をルビーといい、その他の物をサファイアと呼んでいます。

サファイアの名称は、ラテン語で青色を意味する語句“Sapphirus”に由来しています。実際の意味は「土星への親愛」を意味し、サンスクリット語に起源を発するラテン語“Sapphirus”とギリシャ語“Sappherious”とヘブライ語 “Sappier”に由来しています。当社では、サファイアの結晶育成から加工、研磨まで一貫生産しています。

2.2 単結晶サファイアの育成方法

サファイアの製造方法は様々な方法がありますが、アダマンド並木精密宝石ではEFG法(Edge-defined Film-Fed Growth Method)という製法を用いて単結晶サファイアを製造しています。これはルツボの中に酸化アルミニウムの粉を入れ、高熱で熱し、融けた酸化アルミニウムをダイ(サファイア形状を制御しながら結晶を育成させる型)の上部に上昇させ、その融液に種結晶を接触させ、引き上げ、サファイアを結晶化させていく方法です。

EFG法では、ダイの形によって形状が決まります。そのため、同じ装置でダイセットの形を変えることによって、チューブ、プレート、シャレー、基板など、様々なものを、お客先の製品に近い形で作ることができるといった特徴があります。高融点素材の育成のため、EFG法の特徴でもある組成均質性が高い結晶が得られます。組成均質性が高いということは、不純物や原子配列の乱れが少なく、特定のパターンで原子配列が規則正しい状態にあります[参考文献1]

2.3 サファイアの特性

サファイアは、化学的安定性・熱伝導性・機械的強度に優れ、紫外~赤外光領域で高い透明性を示す材料として広く用いられています。

表1:サファイアの物性特性

また、下の表に代表的な音響材料の物理的性質をまとめました[参考文献2]。密度でヤング率を割った値が単位密度当たりの弾性係数の比剛性率です。比剛性率の平方根がその物質の持つ音速です。比剛性の大きな物質中では音の伝搬速度も高くなります。表より弾性係数が飛び抜けて大きいダイヤモンド、次いで密度が低いわりに弾性係数が大きなベリリウムやボロンは音速が高いことが特徴的です。これらの材料の難点は価格と加工性の問題があげられます。昨今技術が発展してきて、人造ダイヤモンドも以前に比べたら比較的に大きなサイズの物が作られるようになりましたが、まだ大口径の単結晶ダイヤモンド製造技術は確立されておりません。大きいものでも10mm角程度のサイズが関の山でしょう。価格もご存知のように高額で現実的ではありません。ベリリウムとボロン材料に関しましては、弾性係数が大きくて、密度の低い材料は硬くて脆いものが多くて、加工が非常に困難です。

これらの材料の物性、入手性、加工性等を考慮して、当社として一番可能性が高い材料としてサファイアに的を絞り、以上のような特徴から導かれる制振性に目をつけ、この後に説明します製品群の開発に着手しました。サファイア自体も高硬度材料ですが、これまで培ってきた加工、切断、研磨技術を駆使して、今日の加工技術を確立しております。

表2:主な音響材料の物理特性
素材名 密度 弾性係数 比剛性 音速
ρ E E/ρ C
g/cm3 x1010dyn/ x106m2/S2 (m/sec)
Al アルミニウム 2.7 74 27.4 5.2
B ボロン 2.3 420 182.6 13.5
Be べリリウム 1.84 280 152.1 15.2
Mgマグネシウム 1.74 45 25.9 5.1
Tiチタン 4.54 110 24.2 4.92
Fe 鉄 7.86 200 25.4 5.04
C ダイヤモンド 3.52 1050 298 17.3
Al2O3 サファイア 3.97 500 125 11.2

2.4 製品紹介

2.4.1 スタビライザー

スタビライザーとは、レコードを押さえ、スリップを防ぎ安定した状態を保つ役割を持ちます。また、レコードプレーヤーに伝わる振動やプレーヤーのモーター振動がスピンドルに介してレコード盤に伝わるのを防ぎます。通常その重量は数百グラムからキログラム単位まで様々なところ、本製品は100gに満たない軽量タイプですが、良い意味で期待を裏切ってくれます。単にターンテーブルの重量を増し、押さえるというよりは、サファイアの制振性素材という特徴を全面的に活かし盤面の微振動を抑えて効率的な音質改善効果を狙った製品です。微妙なノイズ感が減少しSN比を高め、音の分離が良くなります。外径サイズ38mmを採用し、EPアダプターとしても使用できます。


写真2 スタビライザー

寸法:外径38mm, 内径7.3mm, 厚み20mm
質量:87g

2.4.2 カートリッジスペーサー

カートリッジスペーサーはヘッドシェルに取り付けた時の総重量とレコードカートリッジの針先の高さを調整するという機能のほかに、振動対策としても使用されています。カートリッジスペーサーを使用することにより、レコードプレーヤーに伝えわる振動がトーンアームを介してカートリッジに伝わるのを防ぎ、よりクリアーな音を再生させます。カートリッジスペーサーには、布、木材、樹脂系、金属、セラミックス等様々な材質の物が製品化されていますが、当社では世界初のサファイア材スペーサーを発売しました。サファイアのヤング率が高く、硬い素材を使用することにより、余分な振動を遮断して、原音に近いクリアーな音を忠実に再現することが可能となります。中音域の付帯音が無くなり、解像力が上がります。


写真3 スペーサー

寸法:縦16 mm, 横16mm, 厚み0.4 mm
質量:0.4g
耐荷重:5kg

2.4.3 インシュレーター

インシュレーターを辞書で引くと、絶縁物、碍子(がいし)と書かれていますが、オーディオの分野では、振動を遮断する脚の意味合いになります。インシュレーターとはスピーカーをはじめ音響機器底面と接地面との間に挟むもので、振動の問題を軽減するだけでなく、床やラックを介して、音響機器に伝わる低周波の雑味をカットします。 スピーカーは常に振動している存在ですが、それが接地面に対して、直に置かれていることで、振動がダイレクトに接地面に伝わり、再生音が濁ったり、音色バランスが狂ったりしてしまいます。つまりスピーカーの振動をなるべく接地面に伝えないことが重要です。そこで活躍するのがインシュレーターです。インシュレーターには、金属、ゴム、ガラス、木、真鍮などの素材や、様々な形状があります。インシュレーターに要求される特性は、端的に言いますと以下のとおりです。

①機器をしっかり受け止めて固定できる強度
②インシュレーター自体が不快な固有の響きを持たない 
③機器の適切な振動減衰を行い、響きを整える

高純度単結晶サファイア材は、規則正しい結晶構造を持つため、強度、硬度に優れ、理想的なインシュレーター材と言えるでしょう。当社のインシュレーターは特に低域が締まり、中高域がクリアーになり、全帯域の解像感が高くなります。全体的にコントラストがはっきりとして、音像の定位が良くなります。例えばインシュレーターを置いてクラッシック音楽を聴くと、各楽器の音がセパレートされ、コンサート会場を彷彿させます。


写真4 インシュレーター

寸法:直径60mm, 厚み5mm
質量:56g / 個
耐荷重:50kg / 個

3. まとめ

アダマンド並木精密宝石株式会社は、オーディオファンの期待に応え「ORSONIC オルソニック」ブランドを復活し、世界初 サファイア製 オーディオアクセサリー「スタビライザー」、「カートリッジスペーサー」、「インシュレーター」の3製品を販売開始しました。当社の強みである宝石の精密加工技術を活かした新製品は、いずれの製品もプレーヤー、スピーカーなどから出る振動を抑え、クリアーで原音に忠実なクリスタルサウンドの再生を可能にします。これらの製品は、結晶育成から研削、研磨加工まで一切の加工を日本国内の自社工場で生産する純日本製の製品です。パーツメーカーとしてもオーディオ関連企業、オーディオ愛好家、オーディオ市場に少しでも貢献できればと考えております。是非、音響機能部品としてサファイアオーディオアクセサリーのパフォーマンスをお楽しみいただければ幸いです。

参考文献

執筆者プロフィール

米山 浩司(よねやま こうじ)
2004年北陸先端科学技術大学院大学 材料科学研究科卒業、同年並木精密宝石株式会社入社。2016年より音響関連部品の営業に従事。趣味は読書、映画鑑賞