音の匠

第20回 2015年音の匠

大﨑 茂芳様
(奈良県立医科大学 名誉教授)

顕彰内容

蜘蛛の糸の物理化学的研究、
バイオリン弦への活用


1m長のクモの糸束

クモの糸の特性や構造の研究に取り組まれ、数々の発見を多くの著書や論文にて発表されました。研究の中でクモの糸によるヴァイオリンの弦を作れないかとの発想のもと、研究と実験を重ねられその制作に成功されました。通常のバイオリン弦と比べ倍音を多く含む独特の音色や、クモの糸特有の切れにくい組織構造の発見は米国の物理学会誌「フィジカル・レビュー・レターズ」にも高い評価を受けています。
豊かな好奇心や探求心を絶やさず研究に取り組まれ、音の文化に大きな貢献をされた点が評価されました。

JASジャーナル

「クモの糸でヴァイオリンは弾けるのか」
クモの糸を集めるのに苦労したことやクモの糸から究極の危機管理法を発見したこと、クモの糸でヴァイオリン用の弦を作成された過程等を寄稿していただきました。


JASジャーナル
2016年1月号(Vol.56 No.1)
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プロフィール

大﨑 茂芳(おおさき しげよし)様
1946年 兵庫県に生まれる
1969年 大阪大学理学部卒業
1971年 大阪大学大学院理学研究科修士課程修了
1976年 大阪大学大学院理学研究科博士課程修了
1995年 島根大学教授(兼)島根大学大学院教育研究科 教授
1999年~
2012年
奈良県立医科大学医学部 教授
2004年~
2012年
(兼)奈良県立医科大学大学院医学研究科(博士課程)教授 
2008年~
2012年
奈良県立医科大学大学院医学研究科(修士過程)教授
2012年~
2015年
奈良県立医科大学特任教授
2012年 奈良県立医科大学名誉教授
学位
1976年3月 大阪大学理学部卒業
1990年3月 農学博士(京都大学)
受賞歴
2013年4月 文部科学大臣表彰 科学技術賞

業績概要

蜘蛛の糸の物理化学的性質の研究
(1) クモの糸から究極の危機管理法の発見
生体の分泌する代表的なタンパク質としてクモの糸の物理化学的研究に取り組んできた。クモの糸(命綱)の強度がクモの体重のちょうど二倍であり、命綱は電子顕微鏡で二本のフィラメントであることがわかった。この“2”という数値に基づく危機管理の考え方は、紐などの工業的素材のみならず、橋や家の構造物や社会における様々な事柄の危機管理に適用できることがわかった。

(2) 紫外線で強化されるクモの糸
クモの糸は絹糸よりも高い紫外線耐性を持ち、紫外線によって力学的に強化されることを見出した。

(3) クモの糸の強さを実証
クモの糸の強さを証明するために、クモの腹から集めた糸束でヒトがぶら下がることに世界で初めて成功した。本結果は、クモの糸の防弾チョッキや縫合糸などへの用途を広げる道を開いた。

(4) クモの糸でヴァイオリンの弦を作成
実用化レベルのクモの糸の機能性を明らかにするために、クモの糸でヴァイオリン用の弦を作成した。周波数解析をした結果、クモの糸の弦はガット弦や金属弦と比べて倍音の強度に大きな差異が見られ、クモの糸は弦楽器の弦として独特な音色を示す素材であることが分かった。

生体組織におけるコラーゲン線維の研究
マイクロ波を用いて分子や繊維の配向性を計測する新しい方法を見出した。マイクロ波方式を用いて、皮膚、骨、肺、血管などの生体組織におけるコラーゲン線維の配向分布を求めた結果、生体における配向性と運動機能との関係を初めて明らかにした。