音の匠

第10回 2005年音の匠

内沼 映二様・沢口 真生様西尾 文孝様・Elliot Scheiner様(特別賞)

顕彰内容

「立体音響技術への功績」

第10回の音の匠は、オーディオの更なる活性化を願って、音楽の感動を伝えるための立体音響(ステレオからサラウンド)にソフト・ハードの垣根を越えて取組んでこられた3名の方に贈呈しました。また、同じ主旨で海外1名の方に特別賞をお贈りしました。

内沼様:ステレオからサラウンド音楽にいたる録音技術と作品制作の功績沢口様:ステレオからサラウンドにいたる放送番制作技術と番組制作の功績西尾様:ステレオからサラウンドにいたる再生システムの音質向上の功績Elliot様:録音制作および車戴システム開発におけるサラウンド音楽普及の先導的役割を果たした功績

プロフィール

内沼 映二(うちぬま えいじ)様

株式会社ミキサーズ・ラボ 代表取締役社長、レコーディングエンジニア
1944年生まれ。レコード会社「テイチク興業㈱」「日本ビクター㈱/RVC」の録音部を経て1979年、日音スタジオを本拠地として、レコーディングエンジニアの集団である(株)ミキサーズ・ラボ」を設立。 1990年に自社運営スタジオとして「ウエストサイド」を設立。続いて「ワーナーミュージック・レコーディングスタジオ」、CDマスタリング&DVDオーサリングセクションとして「ワーナーミュージック・マスタリング」を設立し現在に至る。 レコーディングエンジニアとして最新技術に積極的に取り組み、ステレオからサラウンドの録音制作に至る40年のキャリアを有し、ジャンルを問わず多くのアーティストのレコーディングに参加して来た。最近では映画のサウンドトラック等におけるサラウンドミックスも手掛け、昨年には音楽を楽しみながら再生システムのチューニングができる5.1chサラウンドチェック・ディスク「CHECKING DVD BY MUSIC」をプロデュースし、自社レーベルよりリリースした 1994年から98年まで社団法人日本音楽スタジオ協会会長を務め業界の発展と録音技術者の育成に尽くしている。 1994年「新日本紀行 冨田勲の音楽”新平家物語”」の制作で第1回日本プロ音楽録音賞の優秀賞を受賞。2001年「ベイビーフィリックステーマソング゙集」”テーマソング:Vo大貫妙子”で第8回日本プロ音楽録音賞パッケージメディア・ポップスロック部門優秀賞を受賞。2003年「Stardust Revue LOVESONGS」”追憶” で第10回日本プロ音楽録音賞ニューパッケージメディア部門(DVDオーディオ)最優秀賞を受賞。 制作を担当したアーティストは角松敏生、SPEED、少年隊、郷ひろみ、前川清、石川さゆり、冨田勲 他多数で、映画サウンドトラックでは「ジャングル大帝」「ドラえもん」「踊る大捜査線」他の作品がある。

沢口 真生(さわぐち まさき)様

パイオニア株式会社 技術開発本部 顧問
1948年生まれ。1971年千葉工業大学電子工学科卒。同年NHK入局。1975年より放送センター制作技術局音声、1987年音声チーフエンジニア。1999年音響デザイン部長。2003年制作技術センター長の要職を歴任。2005年パイオニア株式会社 技術開発本部顧問に就任。専門分野はドラマのサウンドデザイン。1985年以降はデジタル時代のサラウンド音声スタジオ設備設計とソフト開発に従事。 1995年第1回IBCワイドスクリーンAWARDグランプリ受賞作ハイビジョンドラマ「最後の弾丸」を担当。 1991年よりAES を中心としてサラウンド制作の技術発表やワークショップ等を担当。JASではAA懇話会マルチチャンネルグループ主査として次世代オーディオの方向付けに貢献。 92~96年にかけHD-TV MSSG研究会でハイビジョン時代のサラウンド制作に必要な音響設計ガイドラインを策定。その成果はAESにおけるサラウンド制作ガイドラインに反映された。 近年はInterBEE国際シンポジュームの企画運営、JPPA -AWARDミキシング部門審査員やAES 技術委員会スタジオセクションの共同議長を務める。またサラウンド制作を作曲家・アーティスト・デザイナー・エンジニア等への普及のためにサラウンド寺子屋塾を主宰している。 2002年AESよりサラウンド音響への貢献でフェローシップ受賞、2003年にはヨーロッパIBSよりフェローを受賞。2004年には「放送におけるサラウンド制作」の論文でABU最優秀論文賞を受賞。「サラウンド制作ハンドブック」(兼六館)はじめ著書多数。

西尾 文孝(にしお あやたか)様

ソニー株式会社 ビデオ事業本部兼オーディオ事業本部 シニアエンジニア
1961年生まれ。1986年九州大学総合理工学研究科エネルギー変換工学専攻修士卒。同年4月ソニー株式会社入社。 半導体事業本部でテストプログラム設計に従事した後、1988年8月にプロオーディオ事業部へ異動。Sony Classicalレーベル向けの20bitレコーダー用ADコンバーター開発を担当。以降、高精度AD/DAコンバーター設計やCDの高音質化技術“Super Bit Mapping”の開発等、音楽制作サイドでの音質向上技術の開発と普及に携わる。 1994年、オーディオ開発本部への異動後、1bitΔΣ変調信号の直接記録・編集・再生技術(後の“Direct Stream Digital”)開発を開始。1996年にDSD編集処理LSIを開発し、これを用いたプロトタイプのDSDレコーダーとDSD編集機(米Sonic Solutionsと共同開発)の試作を通じて、DSD録音の実用化と基礎的なSuper Audio CD用マスター作成環境の構築を行った。2000年以降は制作機器会社のサポートを中心としたSA-CDの普及活動に従事し、各社DSD対応レコーダーや編集機の商品化に関与しDSD方式の普及定着に努めた。 2004年よりビデオ事業本部 オプティカルシステム開発部門 信号処理開発部 兼 オーディオ事業本部 開発部 シニアエンジニアとして活躍中。DSD方式の応用拡張が期待される。 最近ではJASジャーナル2005年10月号にDSD関連の記事を執筆。

Elliot Scheiner(エリオット・シャイナー)様

録音エンジニア/音楽プロデューサー
1947年生まれ。米国コネティカット州レディングに5.1チャンネルサラウンドスタジオを持つ。 ニューヨークの A&R Recording で Phil Ramone 氏のアシスタントとして出発。1973年にフリーのエンジニア/プロデューサーとして独立。 パーカッション演奏家としても活動したがスタジオ業務に戻り、イーグルス、B.Bキング、エアロスミス、エリック・クラプトン、クイーン、スティング他の優秀なアーティストと仕事をし、また映画「Godfather」等のサウンドトラック制作に参加、日本のアーティストでは矢沢永吉、南佳孝、山本達彦との仕事もある。 常に最先端技術に挑戦し、DVDオーディオ・DVDビデオ・デュアルディスクのためのサラウンドサウンド作品を制作、イーグルスの「ホテルカリフォルニア」、クイーンの「A Night at the Opera」等のサラウンド音音楽作品でステレオを超えたアーティストの創造性を引き出し、多くの音楽ファンの支持を得る。 車載機器分野ではホンダ/アキュラTLに搭載のELSサラウンドシステム等を開発し、車室空間におけるDVDオーディオとサラウンドサウンドの普及に貢献。 グラミー賞受賞5回、Surround Pioneer Award2002受賞、2004年度TEC賞(The Technical Excellence & Creativity Awards)ほか多数の賞を受賞。