学生の制作する音楽録音作品コンテスト

第11回 2025年優秀企画制作賞

背浮7.1.4ch 48kHz 24bit

名古屋芸術大学 芸術学部 芸術学科
深井 龍心さん

インタビュー:受賞作品編

作品のコンセプトと、どのように考えたのかを聞かせてください。

本作品は、「コンセプトアルバムのような一貫した作品性」をコンセプトに制作しました。この作品には、作曲の段階で明確なストーリーラインが存在していたので、それを最大限表現することを目標にしたいと思い、このコンセプトにしました。

制作のアイディアが⽣まれたきっかけなどがありましたら聞かせてください。

コンセプトを最大限表現するために、自身の作品と呼応する部分があるリファレンス音源をいくつか探し、聴き込んだことで、目指すべき音の最終形を模索することができました。

制作する際に、苦労した点、うまく表現できた点、⼯夫した点などを教えてください。

この作品で意図通りの成果が特に得られた点は、リバーブによる空間の構築と、実験音楽的な録音アプローチの2つです。使用するリバーブの選択や、リバーブ内の細かいパラメータの設定、ダイバージェンスやサイズなども活用した細かい定位により、各場面に応じたサウンドエスケープを最大限表現できました。実験音楽的な録音アプローチでは、ハウリング録音や、同部屋での反復録音などを行い、その全てを作 品に昇華することができました。また、制作の中で一番苦労したのは、妥協点をなくすことでした。制作を進める中で生まれる「何かが惜しい」「納得がいかない」などの感覚に真摯に向き合って、ひとつひとつ解決していくことが大事だと気づくことができました。

作品の聴き所、アピールポイントを教えてください。

この作品は大きく3つのセクションがあるのですが、それぞれ使用しているリバーブやミックスのキャラクターに違いがあり、その違いによって空間の変移を表現しています。そのことを意識して、実際に聴いていただくとより面白いと思います。

インタビュー:振り返り編

コンテストに応募してみようと思った理由を聞かせてください。

日本で録音を学ぶ学生達がどのような作品を作っているのか、自分の作品がその中で、どう評価をされるのかを知りたいなと思いました。

受賞時の感想を聞かせてください。

本当にこの作品を作って良かったなと心から思いました。作品としてのクオリティに自信はありましたが、それが審査員の方々に認めてもらえるかだけが不安でした。ですが少なからず良い評価を貰えたということがわかってとてもホッとしました。

制作前、制作中のエピソードについて聞かせてください。

今回の作品は自身で作曲したということもあり、ミックスの際に惜しむことなく、自身の発想を作品に反映させることができました。それがこの作品のコンセプチュアルな部分を担ってくれたように感じます。ですが、それによる弊害もあり、リバーブの多用による負荷によって、Protoolsがエラーを頻繁に起こしてしまうという環境での制作でした。エラーを解消するために、もう一度必要なプラグインを見直し、それぞれをより細く調整しつつ、いくつかのプラグインをバイパスすることになったのですが、それがミックスに良い余白を与えてくれて、良い結果に繋がりました。

参加してみてよかったと思うことを聞かせてください。

やっとスタートラインに立てたような気持ちになりました。自分が作る作品は最低限評価されるレベルにいるということが分かり、自信に繋がりました。

⾳楽制作を経験して、その後、⾳楽作品の鑑賞の仕⽅がどのように変わりましたか?

今回の制作を通して、エンジニアリングは、音色を操るという意味で作曲にも通ずる部分があると強く感じました。その発見から、エンジニア・作曲家が、どうしてこの音色を選択したのかという、意図を考えるような聴き方を意識的にできるようになりました。

現役学⽣へコンテスト参加へのメッセージ・アドバイスをお願いします!

このコンテストで得られるものは、賞や人との繋がりという側面もありますが、一番は「自分の作品がどのように評価されて、どのような感想を持ってもらえるか」を知ることができる点にあると思います。審査員の方々の批評、参加者同士の意見交換、授賞式での多くのプロフェッショナルとの交流、これらは今後の制作の一つの指標として、必ず財産になります。また、より多くの学生が参加することで、コンテストそのものの価値も高まっていきます。挑戦すること自体が、この場を面白くし、次の表現へとつながっていくはずです。完成度や自信の有無に関わらず、ぜひ一歩踏み出してほしいと思います。