学生の制作する音楽録音作品コンテスト

第11回 2025年優秀企画制作賞

天体観測24.2ch 96kHz 24bit

九州大学大学院 芸術工学府芸術工学専攻音響設計コース
荻田 朔さん・久代 連太さん

インタビュー:受賞作品編

作品のコンセプトと、どのように考えたのかを聞かせてください。

本作品は、二人で実際に流星群の天体観測へ赴いた体験を、立体的な音楽作品として表現できないかと制作を開始いたしました。星からは直接音が聞こえないということから着想し、あえて現地でのフィールドレコーディングは行わず、身近なモノや楽器の音素材からのみで音を構築していきました。

制作のアイディアが⽣まれたきっかけなどがありましたら聞かせてください。

共同制作者である久代に突然天体観測へ行こうと誘われたことが始まりです。互いに流星群を観測するのは初めてでしたが、想像よりずっと多くの流れ星を見つけることができて驚きました。

制作する際に、苦労した点、うまく表現できた点、⼯夫した点などを教えてください。

元々音素材にさまざまな加工を施すことを予定していたため、処理での音質劣化を最小限に抑えるよう、可能な限りクリアな素材を録音しようと考えていました。そのため、歪みの少ないマイク、マイクプリを用いた上で、半無響室にて収音を行ったところ、全体を通して澄んだ音空間を演出することができました。

楽曲制作の面においては、数時間に渡る天体観測をうまく短くまとめられるよう、少しずつストーリーを展開させていけるよう工夫しました。普段からアンビエントやドローン作品を聴かない方でも飽きずに楽しめるバランスになっていれば幸いです。

また、一部の音で思った位置に音を定位させることができず、特に前後のバランスが崩れてしまうことに苦労しました。今回はそういった音は広がりを優先して配置することにしています。

作品の聴き所、アピールポイントを教えてください。

本作品は展望台へと向かう場面から、帰るまでを表現しています。ぜひ天体観測へ赴いたつもりになって、寝転びながらリラックスして聴いていただきたいです。

インタビュー:振り返り編

コンテストに応募してみようと思った理由を聞かせてください。

元々二人で作品制作を行いたいと話していた中で、良きタイミングで本コンテストが作品募集を行っていることを知り、挑戦することに決めました。

受賞時の感想を聞かせてください。

お気に入りの作品に仕上がったので、嬉しかったです。

制作前、制作中のエピソードについて聞かせてください。

収録から完成まですべて同じ半無響室で行いました。制作期間中はずっと部屋に篭り、二人で手を動かし続けていたので、なんとか締め切りまでに完成させることができて良かったです。

参加してみてよかったと思うことを聞かせてください。

受賞の実感は未だ薄いですが、これから何か良いことが起これば嬉しいです。

⾳楽制作を経験して、その後、⾳楽作品の鑑賞の仕⽅がどのように変わりましたか?

音楽を制作することは、音楽鑑賞に多分に影響を及ぼしていると思います。残念ながら私は制作活動を始める前の音楽の聴き方を鮮明に思い出すことができません。

現役学⽣へコンテスト参加へのメッセージ・アドバイスをお願いします!

機材やスピーカー構成の制約などよりも、やりたいことが先立つことが重要かと思います。収音・編集を通じて何を表現したいかを明確にすることで、面白い作品を生み出すことができるかもしれません。